完売までの時間が長期化すればするほど、利益は減少する
そして、前頁の表〈5〉~〈7〉で青田売りが始まり、建物が完成するまでの期間に、総戸数の8割まで契約が進んでいれば、マンションの原価分の資金回収には目途がたちます。(儲けの仕組み1を参照)銀行への借り入れも、この段階で完済できれば、その後に売れた住戸の代金が粗利に計上できるわけです。このような流れで全住戸が完売するのが、建物完成後1年以内であれば、まずまずの販売成績というのが、業界の常識です。ところが、これまた、先のリーマンショックのように不動産不況に見舞われると、完売するまでに完成後2年かかるなどということは珍しくありません。完売までの期間が長ければ、販売事務所の経費や販売担当者の人件費が嵩んでいき、利益を圧迫します。
しかも、不況期には需要減、供給過多により、相場価格は時間の経過とともに、下がってきます。そうなると、既に販売中の物件はあとから販売される新規物件に比べて、割高感が強く、更に売れない状況に陥ってしまいます。こうした悪循環を断ち切りできるだけ早い時期に完売するために、水面下の相対で「○月までにお決めいただければ」と値引きや無料オプションが始まります。
不況期に完成までの契約住戸が少ないと黒字倒産が起きる
2008年秋に起きたリーマンショックで、中堅のマンションデベロッパーが何社も倒産したり、倒産には至らないまでも、銀行管理下で企業再生というケースが少なからず発生したことは記憶に新しいことです。こうした事態が生じるのは、〈5〉の青田売りの期間に契約できた住戸が売れ行き不振で少なく、〈6〉.〈7〉で発生する支払いに必要な資金の回収ができず、資金ショートが起こるのが原因です。時間は少しかかるものの、最終的に完売し、事業収支は黒字になる見込みがたっていたとしても建物完成後の支払いのためのキャッシュフローが滞ると、黒字倒産という事態に追い込まれてしまうのです。
まず借金して事業を始め、住戸を青田で売って資金を回収して、完成後に借金を返済するというお金の流れを前提としたマンション特有のビジネススキームは、売れ行き不振でお金の流れが一旦止まってしまうと、黒字でも倒産という事態は避けられないのです。
また、他に賃貸やオフィス、商業施設などの事業を複合的に営んでいれば、他の事業から資金を融通する道もありますが、マンション専業のデベロッパーは、マンション市場全体が不況に陥ると、リスクヘッジする手段が他にないために、倒産は避けられないのです。過去にさかのぼると、だいたい7年おきに不況の波が訪れ、マンション専業のデベロッパーの倒産が新聞を賑わすことになります。
お金の流れをつかむことでわかるお得な販売時期は、次のページで。