マーケティング/マーケティング事例

不毛な価格競争から抜け出すマーケティング戦略(3ページ目)

牛丼業界に代表されるように、デフレ下の日本経済では激しい値下げ競争が展開されています。今回はこのような不毛な値下げ競争から一線を画し、不況下でも成長を続ける企業を取り上げて、価格競争から抜け出すヒントを浮き彫りにしていきます。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

販売プロセスを細分化してライバル企業の弱いところを突く

弱者の戦略

ライバルの弱点を突く戦略を考えよう!

サイクルベースあさひが低価格で攻勢をかける量販店と互角以上にわたりあっている秘訣は、自転車を売ったら売りぱなしにするのではなく、一度お客様となったら一生付き合う覚悟で仕事に取り組む姿勢にあります。これは量販店では真似できないサイクルベースあさひ独自の強みとも言えます。

ビジネスにおいて、付加価値を生み出すプロセスを細分化して強みや弱みを分析する手法にバリューチェーン分析というものがあります。この分析手法を活用して、自転車業界で付加価値を生み出すプロセスを、商品企画から部品調達、製造、販売、アフターサービスに分解した時に、薄利多売で圧倒的なパワーを誇る量販店もアフターサービスというプロセスがアキレス腱になっていることがわかります。

そして、このアフターサービスこそ弱者であるサイクルベースあさひが成功するための大きな鍵を握るプロセスといえるのです。

サイクルベースあさひでは、このアフターサービスを充実させるために『サンキュー点検』と呼ばれるわずか390円(税抜)で自転車のメンテナンスを行うサービスを導入し、徹底したアフターサービスに注力しています。

このようなサービスの充実は取りも直さず顧客数の増加に繋がっていきます。実際にサイクルベースあさひは、年平均6%で顧客数を増やすことに成功し、顧客の増加が売上の増加をもたらしている格好になっています。

マーケティングの定石を実践すればどんな環境でも業績アップが実現できる

今、日本はデフレ経済に突入し、牛丼業界に代表されるように厳しい価格競争が繰り広げられています。

それは、自転車マーケットにおいても同じ構図で、大手の量販店同士が価格の安い自転車を目玉に集客に躍起になっています。この大手の価格競争に巻き込まれないためにサイクルベースあさひは顧客との密着度を高め、顧客が何を望んでいるかを常に探求し、痒いところに手が届くようなサービス、そしてそのサービスを実現する人材育成に注力しているのです。

自転車に特化するという一点集中、そして顧客との距離を近くするという接近戦は、正に弱者が市場で勝ち残るマーケティング戦略の定石であり、サイクルベースあさひは教科書通りにマーケティング戦略を実践して成功を収めていると言えます。

現状、デフレ経済下の日本において大手企業が主導する低価格を武器にした価格戦争に疲弊する企業にとっては、価格以外の面で顧客を魅了するサイクルベースあさひのマーケティング戦略は好事例の一つとして自社の戦略に取り入れられることは多いのではないでしょうか。
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