リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル ステラマリス風
現在、そのレシピを作ることを吉野さんから許可されているのは、パリ本店のシェフと、和歌山の手島さんだけ。つまり、今の日本でステラマリス版のロワイヤルを作れるのは手島さんただ一人なのです。
15世紀から続く、王の皿。全てのフランス料理の頂点に立つ料理だけあり、これを神レベルで作れるのは、類稀な経験と技術が必要ですが、気が遠くなる時間と手間暇、そして古典料理のあらゆる要素が詰まった贅沢なる逸品ゆえ、食べ手にもそれなりの(食の)海外経験値の高さを求められるのが、この料理の難しいところでもあり、面白いところ。
Lievre a la royale facon STELLA MARIS
また、見た目のエレガンスだけでなく、最初に口に入れた時にはリエーブル独特の繊維質が柔らかく滑らかに解けていく感覚があり、そこにショコラのような色艶を放つ血のソースの華やかでフィネス感溢れるアロマが際立ち、実に贅沢で豊潤な味わいとなっているのです。そしてその後を追いかけてくるように、添えられた黒トリュフの官能的な薫香が加わり、マイルドな味わいながら、濃厚な深みを舌の上に残していく多層感には驚きすらあります。
リエーブルが持つケモノ臭はほとんど感じられず、むしろ引き込まれるかのような馨しい「香り」が漂うのは、丁寧な下準備と、良質で力強いワインを惜しみなく使った何日もの煮込み(6回以上も濾す)、そして何より手島シェフの経験と技術の高さの賜物。日本でこれだけ見事なロワイヤルを作り上げたシェフには感謝の気持ちと共に、心からの拍手を送りたい。
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