兵庫&和歌山編
☆「オテル・ド・ヨシノ」より「山しぎ(ベキャス)のサルミソース」山しぎ(ベキャス)のサルミソース
ソースは、皿を出す直前に仕上げられたというサルミソース。ガルニは黒トリュフを混ぜ込んだニョッキと、ジャガイモのギャレット、セップ茸。そして香りのアクセントには、パリのランブロワジー等で使用されている究極の黒トリュフ! 食べる前から、皿から漂う香りだけでも悶絶級の一皿になっているのです。
この料理の魅力というか、もっとも特筆したいのは、やはり要となる「ソース」と「肉のバランス感」。ベキャスの肉(身質)が持つ独特の深い滋味を、より活かすにはフォアグラを混ぜた濃厚なサルミソースよりも、今回のような(ベキャスの)ガラのエキスを白ポルト酒で煮詰めた軽めのソースのほうが、ベキャスが持つ「真味」を一層引き立てる最上のソースになると思うのです。
また、このベキャスの最大の魅力は、「脳みそ」と「内臓」。この「脳みそ」と「内臓」がないと、ベキャス料理にあらず、とも言えるほど重要なポイントなのですが、今回は「脳みそ」はそのままで、そして「内臓」はギャレット仕立てになっており、特にこの「内臓のギャレット」が素晴らしい! 「脳みそ」の雲子のような美味しさはもちろん、この内臓のコクと旨味の凝縮感は、まさにベキャスの真骨頂。さすがはジビエの王様と言われるだけの味わいです。
この料理も掲載されているジビエ記事はコチラ。
「オテル・ド・ヨシノ」の過去の記事はコチラ。
☆「メゾン・ド・ジル 芦屋」より「フォアグラのスペシャリテ」
フォアグラのスペシャリテ
表面の絶妙な焼き目加減だけでも美味しいことは確信できますが、実際に食べてみると、舌の上で「ふるふる」ととろけるテクスチャが何とも官能的! フォアグラ特有の脂の甘味と食感や香りを引き出す、二度焼きによる丁寧な火入れに、極みの塩加減など、これはもうフォアグラ料理のお手本のような、理想的な完成度でしたね。
ソースも、シードルによる甘酢感を際立たせたものが使われており、これがまたフォアグラを引き立てる相性の良さ。これはもう文句なしにエクセラン!
さすがはスペシャリテ級の料理だけあって、これは是非食べていただきたいメニューだと思いますが、時期によってはメニューにない場合もあるかもしれませんので、どうしても食べたい! という方は、予約の時点でリクエストしてみてくださいませ。
「メゾン・ド・ジル 芦屋」の詳細データはコチラ。
☆「グランメゾン グラシアニ」より「特選和牛フィレ肉のロティ、グラシアニ風」
特選和牛フィレ肉のロティ、グラシアニ風
そして、この肉に併せるのは、やはり王道ペリグーソース(+レンズ豆)。たっぷり乗せられたトリュフの官能香はもちろん、ペリグーソースの甘味感も程よく、基本となるソースのレベルの高さが素晴らしい。
先鋭的な調理法も取り入れつつ、こういうクラシック・フレンチの基本力がしっかりしているところが、「グランメゾン」たる証。森永シェフの卓越した実力を魅せつけられた一皿でした。
また、別皿で用意されたココット鍋には、ジロール茸を始め、野菜がたっぷり! 完璧なまでに香りと旨味を閉じ込めた完成度で、ジロールの風味が染み渡った野菜達と出汁の薫香が、何とも食欲を駆り立てます。ココット鍋を使った野菜料理で、ここまで繊細さと旨味が連れ立って高みに達しているのは何とも見事。単なるガルニの枠を超えた、フィレ肉のロティと並んでW主役の存在感となっているのです。エクセラン!
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☆「ベナトン」より「淡路産「エイ」のソテー」
淡路産「エイ」のソテー
今まで「エイ」は国内外問わずに食べてきましたが、淡路産のエイは、さすがに鮮度が高い上に、ゼラチン質がたっぷりで、その食感をオノマトペ(擬音)で例えると、プリプリを超えて、もうプリュンプリュンの域。鮮やかな縞模様のヒレに、大ぶり肉体美と肝のぽってり感は、官能的な色気すら感じさせるほどでした。
味わいについては、シンプルにソテーされた料理だからこそ、素材の質と活かし方がポイントとなるのですが、とりわけ「火入れ」が素晴らしく、極みともいえる素材の活かし方に心を打たれましたね。
身やヒレが美味しいのはもちろん、「肝」に至るまで、エイの魅力をここまで表現しきったエイ料理は、世界中どこを探しても他にないのではないかと思うほど、超絶クォリティな逸品。まるで、口の中がエイが泳ぐ海遊館になったような、そんな気持ちにすらなれましたね。
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