京都グルメ/京都の和食

まとの(京都・高台寺)(4ページ目)

今年3月、高台寺エリアに移転した名店「まとの」。今回は多種多様な料理が愉しめる、夜コースを御紹介していきます。

執筆者:麻生 玲央


・蒸物
蒸物

菊花かぶら

続いては、「菊花カブラ」が登場。見た目も菊花の黄色が釣らしてあり鮮やかで美しいですが、さらに「モロッコ三度豆」の緑と、紅葉麩の赤、巻き湯葉の彩りで、実に華やかな一品に。

射込みカブラと、その中に入っている鶏肉、優しい風味の「とろみ餡」が織り重なるように一体となり、旨味の多層感が五臓六腑に深く染み渡っていくかのよう。食べ終わる頃には身も心も温まる逸品でした。


・揚物
天麩羅。

揚物

素材を活かすことにだけ心血を注ぐのが江戸前天麩羅とすれば、一流の京料理(日本料理)における天麩羅は、素材に一仕事を施してテイストを生み出したり、素材を掛け合わせて新しい味わいを作ったり、見た目(盛り付け)の美しさにもこだわったりするなど、様々な要素から成る複合芸術のようなスタイル。

例えば今回の場合なら、「鮟鱇」は燻製(自家製)にして旨味を凝縮してから揚げてあるので、プーンと立ち昇る薫香と旨味のアタックが抜群! 他にも、「鯛」は「松茸」を包んで揚げることで、それぞれの香りの多重感だけでなく、噛みしめた時の食感も心地良い。それら以外にも、「豆乳豆腐」には「抹茶」を織り込み、外はパリッと中はクリーミーと味わいのコントラストがとてもユニーク。あとは「チップ状のクワイ」「万願寺とうがらし」「鷹ヶ峰とうがらし」で盛り付けの彩りを演出してあり、食べるのがもったいないほど美麗なる一皿に仕上げられているのです。


・酢物
天然とらふぐ

天然とらふぐの煮こごり

そして、この酢物が特筆物の出来栄え! 見た目の美しさや丁寧で綿密な作り込みもさることながら、全体を織り成すハーモニーが渾然一体の、まさに「食べる芸術」を生み出しているかのよう。

「天然トラフグ」を使った「煮こごり」の上には、「ナス」と「ずいき」を円やかな酢で和えたものが添えられ、さらにそこに「香箱蟹の外子」を乗せることで、彩りと食感のアクセントを付与。器も含めたルックスの美麗さと、全てが上品に纏まるハーモニーの結晶たる味わいは、本物の一流料理人だけが到達できる、和の極致。

今まで35年間、京料理を食べ続けてきましたが、これだけ見事な「酢物」は初めてですね。


次ページは、「飯物(混ぜ御飯)」や「水物」を御紹介します。
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