自分がうまくいかないのは親のせい? 社会が悪い? 

落ち込む女性会社員

他人のせいにできれば傷つかなくてすむ……と思っていませんか?

最近、自分の不運を誰かのせいにすることでえ、自分を守ろうとする若者が増えていると言われています。

虐待やいじめのように、実際にひどい扱いを受けてしまった人が「親のせい」「友だちのせい」と他責感を持つのは無理もないことかもしれません。しかし皮肉なことに、このように本当にひどい被害を受けている人ほど、「私が悪いからだ……」と自責感にかられる傾向にあり、逆に恵まれた状況に置かれている人ほど、不運の責任を他人や社会、環境に求めてしまう傾向があるようです。

他責感の強い若者は、事実に即した冷静な自己分析ができない状態に陥っています。「こんな親から生まれなければ、もっと成功できたのに」「就職活動がうまくいかないのは、家系のせいだ」こんな口ぐせの多い若者に共通するのが、「自分は悪くない」という自己中心性の信念です。

自己中心的な若者が増える背景にあるものは?

jikoai

与えられること、特別扱いに慣れて育つと自己中心性が強くなりやすい

自己中心的な若者が増えたことには、いくつかの要因があると考えられます。なかでも少子化の影響から、親や祖父母から愛情を一身に受け、甘やかされている若者が多いという事実が挙げられるでしょう。

博報堂(2006年)の調べによると、今や1人の子どもが持つ平均ポケット(お金の出所)数は約7つ。つまり、父母、両方の祖父母、おじやおばなどを加えると平均7人くらいから、お小遣いやプレゼントをもらえる、ということです。

記念日には抱えられないほどのプレゼントや大金をもらい、ねだればすぐに行きたいところに連れて行ってもらえる……。こんな状況が当たり前になると、与えられることに感謝の気持ちを持ちにくくなります。我慢したり、努力して手に入れるという経験も持ちにくくなります。

また、幼いころから「成功神話」に煽られて育つ若者が多いことも影響していると思われます。「勉強ができればわがままが通る」「お金持ちの子は何をしても許される」……特別扱いが許される環境で育つと、成功するごとに自己中心的になります。ところが一歩社会へ出れば、自分自身の実力の限界を知り、努力ではどうにもならない世の中の理不尽さにも直面する機会も増えるでしょう。そのとき、自己中心的な人ほど「完全ではない自分」を受け入れられずに、成功を煽ってきた親や周囲への恨みが強くなってしまうことがあります。

また、自分と同じように「他人にもかけがえのない人生がある」ということ、「自分はたくさんの人の支援のもとに生きている」ということが実感できない環境で生きている場合、やはり自己中心的な思考と行動が増えてしまうでしょう。


強い自己中心性から心のトラブルが生じることも

jikoai3

自己愛が強すぎるがゆえに精神的な病気になることも

自己中心性は、逆境において自分を守るためには必要な考え方でもあります。他人のせい、社会のせいだと思っていれば、自分を責めることはなくなるからです。しかし、その特性ゆえに心のトラブルが生じてしまうこともあります。

1つは、自己愛性パーソナリティ障害。これは自分が特別で賞賛に値する人物だと過剰に思いこみ、他人への共感性に乏しく、自分のために他人を平気で利用したり、傲慢な態度で他人に接したりするパーソナリティ(人格)の障害です。

また、最近問題になっているのが、若い世代に多い「新型うつ病」と呼ばれるタイプのうつ病です。

従来、うつ病は真面目で几帳面、自責感が強いタイプの人が自分を追い込んだ(もしくは他人に追い込まれた)末になる病気と言われてきました。一方で、仕事はやりたくないのに趣味には熱中したり、「こうなったのは会社のせい、親のせい」と他責感を持って抑うつ的になるのが、若い世代に多い「新型うつ病」です。強すぎる自己中心性のゆえに、周りを責めながら憂鬱感が強くなってうつ病になってしまうのです。

従来型のうつ病の場合、薬物療法を続けながらゆっくり休養をとり、自責的な認知を変容させることで回復していきますが、この新型うつ病の場合は社会の常識や規律のある生活に慣れさせ、自己中心的な認知を変容させるという正反対のアプローチが検討されます。

次のページでは、「強すぎる自己中心性を変えるためのポイントとは?」について解説します。