爆発的ヒットを記録した「キリン 午後の紅茶 エスプレッソティー」

発売後驚異的な売上を記録しているキリンビバレッジの「午後の紅茶 エスプレッソティー」

発売後、驚異的な売上を記録しているキリンビバレッジの「午後の紅茶 エスプレッソティー」

キリンビバレッジの「エスプレッソティー」が好調に売上を伸ばしています。

1000種類にもわたる新製品が発売されても、3つほどしか生き残れないという激しい競争が繰り広げられる飲料市場において、確実に消費者の支持を受け日々その存在感を増しているのです。

事前に立てた計画では年間100万ケースを想定していたものの、発売当初から予想を上回る売れ行きが続き、わずか2ヶ月半で目標を達成。今後は年間200万ケースを視野に入れて、マーケティング戦略をますます加速させています。

果たしてエスプレッソティーは、どのように爆発的なヒットを記録することができたのでしょうか? その素朴な疑問を開発担当者であるマーケティング部商品担当主任の西村努氏に直接ぶつけ、秘密を解き明かしていくことにしましょう。

「午後の紅茶」を襲った危機から生まれた新ジャンル

キリンビバレッジ株式会社マーケティング本部商品担当主任の西村努氏の口から「午後の紅茶 エスプレッソティー」をヒットに導いた数々のマーケティング戦略が語られた。

キリンビバレッジ株式会社マーケティング部商品担当主任の西村努氏から「午後の紅茶 エスプレッソティー」をヒットに導いた数々のマーケティング戦略が語られた

キリンビバレッジはもともと「午後の紅茶」というビッグブランドを擁し、紅茶飲料市場ではおよそ3割を占めるマーケットリーダー。ただ、それゆえに売上は市場に大きく左右され、「午後の紅茶」もここ数年の紅茶飲料市場の伸び悩みに引きずられるように苦戦を強いられていました。いかにビッグブランドで市場のリーダーに君臨するキリンビバレッジといえども、成熟する市場の中で新たな成長の起爆剤となるような商品開発が急務となったのです。

そこで、マーケティング部門では紅茶市場に捉われずに、ゼロベースで飲料市場全体を洗いなおす作業に取り掛かかります。そのマーケティングリサーチで明らかになったのが、「紅茶というのは間口は広いが、コーヒーやお茶のように奥行きが広がっていない」という事実でした。実際に缶コーヒーの市場は年間3億ケース以上と、1億ケース程度の紅茶飲料市場に比べ3倍も大きい。

この結果を受けて西村氏は1つの仮説に行き着きます。「缶コーヒーに近い新たなカテゴリーで製品開発を行えば、これまでとは違う顧客を獲得でき再び紅茶飲料市場を成長軌道に乗せることができるのではないか?」と。

また、缶コーヒー市場における消費者の特性も、新たな「午後の紅茶」が受け入れられる可能性を秘めていました。缶コーヒーの愛飲者はヘビーユーザーが多く、1日に何本も缶コーヒーを飲みます。ところが、いつも同じブランドを選ぶユーザーは2割ほどに過ぎず、大半のユーザーは1つのブランドに飽きて毎回いくつかのブランドの中から気分に応じて選択したり、まったくブランドにこだわらずに購入したりしているのです。つまり、1日3本の缶コーヒーを飲むヘビーユーザーがいれば、そのうちの1本を新たな「午後の紅茶」にしてもらえるだけでも、マーケットが巨大なだけに、大きな売上を記録することができるというわけです。

そのようにして、20代から30代の男性で頻繁に缶コーヒーを飲むヘビーユーザーにターゲットを絞った新生「午後の紅茶」プロジェクトは、仕事の合間のちょっとしたブレークタイムでリラックスするために、缶コーヒーの代わりに飲める紅茶を目指して製品開発に取り組み始めます。

プロジェクトの推進役を務める西村氏は、缶コーヒー「FIRE」の開発など10年にもわたって缶コーヒーに携わってきた缶コーヒーのスペシャリスト。ただ、西村氏はどうすれば缶コーヒーユーザーに支持される紅茶を開発できるのかに頭を悩ませます。そして、辿り着いた結論が紅茶の茶葉をエスプレッソ抽出するということだったのです。紅茶葉をエスプレッソ抽出すれば、紅茶葉の持つ良質の苦みをうまく引き出し、凝縮された濃厚な味わいを実現できます。紅茶でもコーヒーに負けず劣らないテイストを提供できる確信に至ったのです。

そこで、原料にもこだわり良質な「ウバ茶葉」や「アッサム茶葉」を中心にブレンドした茶葉を高温・高圧でエスプレッソ抽出することにより、ついに生み出されたのが「エスプレッソティー」だったのです。