パーソナルスペースとは? 親しくない人が近づくと不快に感じる距離って?

十分なパーソナル・スペースを確保していますか?
たとえば、電車内が空いていれば、隣の人との距離を空けて座る方が多いですし、親しくない人と話す際には、対面ではなく斜め前の位置に座る、という方も多いと思います。
このように、人は無意識のうちに他人との間に距離をとって、快適な空間を保とうしています。こうした個人的な空間のことを「パーソナルスペース」と呼びます。親しい相手とはその空間を狭くとることができますが、親しくない人相手との間では、十分なパーソナルスペースを確保できないと不快感を覚えてしまいます。
アメリカの文化人類学者であるエドワート・ホールは、パーソナルスペースを4つのゾーンに大別し、それをさらに近接相と遠方相という2つの相に分類しました。そのなかで、親しい者同士に許される空間についてご紹介しましょう。
●密接距離---ごく親しい人に許される空間
・近接相(0~15センチ)
抱きしめられる距離(最も親しい人だけ)
・遠方相(15~45センチ)
すぐに相手に触れられる距離(ささやきあえる)
●個体距離---相手の表情が読み取れる空間
・近接相(45~75センチ)
相手を捕まえられる距離(とても親しくなければ、違和感をおぼえる)
・遠方相(75~120センチ)
両方が手を伸ばせば指先が触れあう距離(個人的な話をするとき)
上記の空間のなかに親しくない人が入ると、不快感をおぼえることが多くなります。ただし、これらのパーソナルスペースには個人差があります。
95%がストレスを感じている? 通勤通学電車でのイライラの原因

満員電車ではパーソナルスペースが確保できないため、意識を他のことに向けている
ところで、パーソナルスペースがとれないことでイライラする空間といえば、まず「電車」を思い浮かべる人は多いでしょう。
ある民間の調査によると、95%の人が通勤通学電車の中でストレスを感じています(マクロミル、2016年)。多い順に「満員電車・混雑」46%、「乗降時に出入り口等から動かない乗客」44%、「他の乗客のにおい」(汗臭さ・香水など)43%、「ヘッドホンからの音漏れ」37%、「電車の遅延」が37%という結果でした。上位4つまでは、十分なパーソナルスペースがとれないために感じているストレスであることがわかります。
不愉快なことに意識を向ければ向けるほどイライラは募ってしまうものですが、スマホを見る、音楽を聴く、考え事をする、外の景色を眺めるというように、意識の矛先を他のものに向ければ、ストレスを和らげることができます。
自然に距離をおいてしまう夫婦は危機なのか?

親しい間柄でも、パーソナルスペースに入られると不愉快になることも
パーソナルスペースの変化は、親しい人との居心地のよい距離間を確かめる目安にもなります。
新婚時代には、パートナーとソファに横並びでくっついて座っていられたのに、いつのまにか端と端に座るようになる。このように、年月とともにパーソナルスペースが広くなっていくのは自然なことです。だからといって、それが夫婦の危機を意味するわけでもありません。その距離感がお互いにとって心地いいなら、無理して距離を近づける必要もないでしょう。
親子についても同様です。幼い子は親とぴったりくっついて過ごすことを好みますが、思春期が近づくと、隣に座ることすら嫌がるものです。これは子どもの自立の証であり、親子の危機を意味するわけではありません。
お互いに居心地のよい距離感を大切にしながら、ストレスなく暮らしていくためには、パーソナルスペースを尊重していくことが大切です。これは長い付き合いを円滑に続けていくための、生活の知恵でもあります。お互いのパーソナルスペースを大切にしながら、上手に人と人とのお付き合いを続けていきましょう。
参考文献:『かくれた次元』エドワート・ホール/日高敏隆 佐藤信行訳(みすず書房 1970)
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