復職するときこそ、産業医との面談は必要
復職時こそ自分も周りもあせらないように、産業医との連携が必要になる |
もちろんです。復職した社員は必ず面談しています。主治医は、会社の環境や仕事内容を具体的に把握しない上で、復職許可を出していることもあるからです。
したがって産業医が、その人の状態を職場の環境や仕事内容を照らし合わせ、復職許可をもう少し延期させることもあります。
------心の病の場合、復職した後が最も注意が必要ですものね。
そうです。復職許可は「以前のようなペースで働いてよい」という許可ではありません。あくまでも自分の心身を優先させ、負担にならない範囲で仕事をすることが大切なのです。
心の病気は、体の病気と違って治癒までには時間がかかります。復職時はまだ「寛解」の状態にあるということを、本人も周りの人もよく理解しなければなりません。
------しかし、復職した本人はどうしてもあせってしまうものです。
それが問題ですね。心の病の場合、治療は半年から1年以上休職しなければならないこともあります。その間、傷病手当金が健康保険から支給されますが、休職後最長1年6ヵ月までという期限があり、それを過ぎると無収入になってしまいます。
したがって、経済的事由から、「なんとか早く復職しよう」とあせってしまう人が多いのです。しかし、あせって復職したことで、逆に治療を長引かせてしまったり、最悪の場合自殺を図ってしまうケースが後を絶ちません。
------職場も家族も、温かく見守る必要がありますね。
心の病で治療を始めた場合、本人も周りもとにかくこの病気の特徴を理解すること。そして、あせらないこと、1人で負担を負わないこと、誰か1人に負担を負わせすぎないことが大切です。
心の病はいつ誰が発症するか分かりません。仕事のストレスがこれだけ問題になっている現在、自分の会社ではどうすべきか、経営者も社員も、一度じっくり考えてみる必要があるのではないでしょうか。
塩谷賢一先生 認定産業医 昭和大学医学部卒業後、日本大学医学部麻酔科入局、(財)癌研付属病院麻酔科入局。現在、癌研有明病院麻酔科副部長。さんぎょうい(株)会長。 塩谷先生のホームページ⇒さんぎょうい株式会社 |