ストレス/仕事・職場のストレス(パワハラ・セクハラ等)

社員を大事に長く使う会社が強いのはなぜ?(2ページ目)

ストレス対策が何も取られず、社員が心の病に至るまで精神的に追い詰められる会社も少なくありません。産業医の塩谷賢一先生に、これからの会社と社員はメンタルヘルスをどう意識すればいいのかについて伺いました。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

どんな会社、どんな人がメンタルヘルスを壊しやすい?

新興のデスクワーク系企業は、メンタルヘルスに要注意
新興のデスクワーク系企業はメンタルヘルスに要注意!
------実際に、産業医として色々な会社を見て来られて、心の危機を抱えた労働者は増えていると感じますか?

とても増えています。実際に、産業医の依頼の理由はメンタルヘルス対策関連がメインです。特に新興でデスクワークが中心の会社に、心の危機を抱えた社員は多いです。逆に、何十年も続いてきた製造業などでは、それほど多くないという印象があります。

新興の会社では、仕事の内容自体が新しく前例が少ないことから、社員が自分一人で仕事を抱え、問題にぶち当たっても誰にも相談できずに悩んでしまうようなことが起こりやすいのではないかと思います。また、これはどこの会社でも共通ですが、人間関係上の問題はやはり多いです。

------労災では残業時間の長短が認定の目安になっていますが、やはり長時間労働の社員が心の危機に陥りやすいと言えますか?

残業時間は、ストレス要因の客観的なデータとして利用しやすいんですよ。だから、どうしても長時間労働をしている人を「心の病のハイリスクグループ」として重点的にチェックすることになります。

しかし、残業時間が少ない人からもかなり心の病は出ていますし、むしろ、そちらの方が多いという印象もあります。仕事のストレスは、時間や量だけの問題ではないからです。人間関係の問題、仕事の質へのストレスもあるでしょう。また、離婚や失恋などプライベートの問題がきっかけとなって、仕事への情熱がなくなってしまった人もいます。

したがって、心の病を労働時間との関連だけでなく、「どの社員にも起こる可能性がある」という見方で考える必要があります。

------しかし、産業医との面談にはためらいを感じる社員も多いのではないでしょうか?「もし、会社に面談の内容を知られたら・・・・・・」と。

医師には守秘義務がありますから、たとえ会社の依頼で面談をしたとしても、本人が承諾しないかぎり話の内容を会社に伝えることはありません。たとえば、「受診したいと言ったら、就業時間内でも必ず病院に行かせてあげてください」という指示は出しますが、どの病院で何科を受診する、ということまでは話しません。

産業医の守秘義務については、会社の上司にも理解してもらうよう伝えていますので、安心していいでしょう。

------産業医と話すことによって、自分の心の状態に気づくことができる人は多いと思います。

そのとおりです。心の病は重くなるにつれて病感を感じにくくなる、という特徴があります。たとえば、うつが重くなっている人ほど、「自分はうつかもしれない」ということに自分自身では気づきにくいのです。

したがって、産業医と面談する中で心の病の可能性に気づき、どのようなステップで療養していくべきかを明快に理解できるだけでも、メリットを感じるはずです。また、必要な場合には信頼できる精神科医に紹介してもらえますので、安心ですよね。

上司や同僚、家族がどのように接したらいいのかも指導しますので、周囲もいたずらに不安を募らせることもなくなるでしょう。


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