カミニティのMVP受賞の陰にはステロイドの使用がありました (photo by artworks) |
野球選手として初めてステロイド剤の使用を告白した名三塁手ケン・カミニティ
今回はメジャーリーグで最初に公式の場(2002年のスポーツイラストレッド誌のインタビュー)で蛋白同化ステロイド(筋肉増強剤)の使用を認めた、かつての名三塁手ケン・カミニティのエピソードをもとにステロイド使用の怖さをお伝えしたいと思います。カミニティは1987年のデビューから2001年の引退までメジャーリーグの主にヒューストン・アストロズとサンディエゴ・パドレスでプレーしました。彼の1996年のシーズンの活躍はサンディエゴ・パドレスを地区優勝に導き、MVP(最優秀選手賞 )とゴールデングラブ賞を受賞しました。
ケン・カミニティのMVP受賞の陰にあるステロイドの使用
蛋白同化ステロイドは男性ホルモンのテストステロンに構造が類似していて筋肉増強作用があり、短期間にスピード、パワーをアップし競技能力を向上することが可能です。ケン・カミニティは1996年、サンディエゴ・パドレスでプレーしていた時、シーズン中ばに肩を痛めました。彼は傷めた筋肉の回復のためにステロイドを初めて使用したと告白しました。
ステロイドの使用は米国では医療用以外では禁止されていますが、隣国のメキシコでは薬局などで簡単に手に入れることができます。彼がプレーしたサンディエゴはメキシコ国境に近く、ステロイドを手に入れやすい環境にあります。
ケン・カミニティはその時、33歳で、それまでに打ったホームランは26本が最高でした。彼はステロイドを使用した後、打ちまくるようになり、打率328、本塁打40、打点130の成績を残しチームの地区優勝に貢献し、MVPを受賞したのです。後半戦だけで28本のホームランを打つなどパワーの向上には目を見張るものがありました。
ケン・カミニティは以後もステロイドを使用し続けましたが、故障しがちなこともあり、この年の成績を越えることはできませんでした。
ステロイドに蝕まれる心と体
ケン・カミニティはステロイドの大量使用のために体内で男性ホルモンをあまり作らなくなり、テストステロンのレベルは正常な状態の20%にまで低下してしまい、ひどく気分が落ち込むようになりました。また、つき過ぎた筋肉のために、筋肉を支えるじん帯が増大した筋力に耐え切れず傷みやすくなり、度重なる故障者リスト入りの原因にもなりました。
さらに、彼はコカインにも依存してしまい、引退直後にコカインの現行犯で逮捕されました。
41歳で急死の背景にはステロイド、コカインの使用
ケン・カミニティは2002年10月に心臓発作で急死しました。彼の心臓発作の原因の詳細は不明と発表されていますが、ステロイド、コカインの使用が発作に関与したのではないかと疑われています。ステロイドの副作用には高血圧や血液中のコレステロール、血糖値の上昇などがあり、動脈硬化を進行させ、冠動脈(心臓に栄養を送る血管)が詰まりやすくなります。また、長年のステロイドの大量使用は心筋を肥大させ、心不全を起こす原因となります。一方、コカインの使用は冠動脈を攣縮させたり、致死性不整脈を起こす可能性があります。
ケン・カミニティにとって野球での栄光の代償は…、あまりにも大きかったですね。栄光をつかむためには何でもありというのは、やはりまずいと思います。それにしてもステロイドの使用は大きな危険を伴っていますね。
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