メンタルヘルス

プレゼントの心理学的効果…物の価値以上に嬉しいのはなぜ?

【医師が解説】「プレゼントをもらうと嬉しい」というのはあまりに当たり前のことですが、人が幸せを感じるときは、大抵、何らかの欲求が満たされたときです。プレゼントをもらうのは、嬉しいものですが、こんなときはどんな欲求が満たされているのでしょう?

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

もらうと嬉しいのはなぜ? プレゼントの心理学的効果

プレゼントの心理学的効果

プレゼントの心理学的な効果は? 物を手に入れる嬉しさだけではない感情があるはずです

「おいしいものが食べたい」「愛されたい」「人から尊敬されたい」。わいてくるさまざまな欲求は、人の行動や態度、気分を左右します。欲求が満たされると幸せを感じますが、欲求が満たされない状態が続くと、心は不安定になりやすくなります。心理学的に考えれば、「幸せを感じる」ときは、多くの場合「心の欲求が満たされたとき」と言うこともできます。

例えば誰かからプレゼントをもらうと、嬉しく感じるものです。当たり前に思えるかもしれませんが、このときは実はさまざまな欲求が満たされているときなのです。プレゼントの心理学的効果を考えてみましょう。
 

人の欲求は5つに分けられる? 「マズローの欲求5段階説」とは

心理学者マズローの欲求階層図

【心理学者マズローの欲求階層図】下層の基本的な欲求が満たされたら、上層にあるより高度な欲求を満足させたくなります

人の欲求は、アメリカの心理学者であるマズローの「欲求5段階説」を基本として説明されることが多いです。マズローの理論によると、人の欲求は上図の5層のピラミッドで表されます。そして人の行動は、より上位の欲求を満たそうとするように動機づけられています。

最も基本的な欲求は、食欲・睡眠欲・性欲などの生理的な欲求です。それよりも上位に、安全欲求や、帰属意識・愛情、他者からの尊敬などへの欲求があり、あらゆる欲求の頂点には自己実現が位置しています。

下位の欲求ほど、人間にとって基本的な欲求で、真っ先に満たされることが求められます。ことわざにも「衣食足りて礼節を知る」というものがありますが、他者からの尊敬や自己実現といった高度な欲求を満たすためにも、まずは生理的欲求が満たされていることが必要であると考えられます。

欲求が満たされないと心は緊張し、精神的に不安定になります。例えば職場で、上司が自分のアイデアを認めてくれず、やりたい仕事ができないといったこともあるでしょう。このようなときは、仕事を通じての自己実現が難しくなります。慢性的にストレス状態が続くと、高血圧や心血管系の不調など体への症状や病気が起こりやすくなりますし、睡眠障害やうつ病などの心の病気の引き金にもなります。

また、ドーピングの誘惑に負けてしまうスポーツ選手のように、他人からの尊敬や自己実現を果たす欲求が強く、ルール違反を犯してしまうというケースもあります。
 

プレゼントやお返しをもらったとき、何ももらえなかったときの心理

5つの段階とさまざまな種類がある人間の欲求ですが、では、プレゼントをもらうことでどのような欲求が満たされるのでしょうか? また、期待してきたプレゼントをもらえなかったときの心理状態も一緒に考えてみましょう。

1. プレゼントをもらったときの心理状態・プレゼントの心理学的効果
プレゼントをもらったとき、自分のことを想ってくれる人がいることが実感できます。時々覚えるかもしれない孤独感も頭から消え失せ、プレゼントという形で見える相手からの愛情を嬉しく思うはずです。このときに満たされているのは、欲求ピラミッドの第3層の「帰属意識・愛情」です。

また、相手からよく思われていると分かるので、第4層の「他者からの尊敬欲求」も満たされます。プレゼントが何かおいしいものだったら、基本的な欲求である「生理的欲求」も一緒に満たされますね。

2. プレゼントのお返しをもらったときの心理
プレゼントを渡した相手から何かを受け取ったときはどうでしょう? 相手からの愛情を感じたり、よく思われていると実感できたりする点は、プレゼントをもらったときと同様です。

もしお返しの方が渡したもの以上に価値があるものだと、違った感激があるかもしれません。もちろんプレゼントは気持ちが大切ですが、より手間のかかったものや、金額的に高いものだった場合、相手からさらに認められているという感情につながりやすくなります。第4層の尊敬欲求が、より満たされることになります。

欲求の頂点に位置する自己実現欲求はどうでしょう? もしも「幸せな人生を送る」ことが人生で一番大切なことだと考えているなら、「こんなプレゼントをくれる人がいて、幸せ!」と感じ、この欲求も満たされます。

3. 誰からもプレゼントをもらえなかったときの心理
ここまでのケースとは反対に、誕生日やクリスマス、バレンタインなど、親しい人からのプレゼントを期待してしまうようなときに、何ももらえなかった場合はどうでしょうか? 物の問題ではなく、誰も自分のことを気にかけてくれていないのではないか、相手にとって自分の存在はあまり意味がないのではないか……と寂しさを感じ、第3層の「愛情欲求」が危機を迎えてしまうこともあります。考えすぎると、精神的に不安定になってしまうこともあります。

こういうときは、自分で心をケアすることも大切です。物事は見方を変えると、大分違って見えるもの。期待していたプレゼントがもらえなかったからといって、それはあなた本来の価値を左右するものではないのです。プレゼントのことは一旦忘れて、自分の最終目標にすべき「自己実現」を目指して、頑張ってみるのがよいかもしれませんね。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます