慢性的な「死にたい気持ち」には注意が必要

死にたい気持ち

慢性的な希死念慮はうつ病の可能性があります。理由ははっきりしないのに何となく「もう死にたい」という気持ちを抱えている場合、注意が必要です。

「毎日が空しい」「希望がまったく見えず、何もかも投げ出したい」「自分は周りのみんなに迷惑をかけているだけだ」……。心の危機は、深刻な状態になっていても心の中にあるだけに、他人からはなかなか分かりづらく、一人で辛さを抱え込むことになりがちです。

多くの場合、上記のような死にたいという気持ちが生じるのは、何かショックな出来事が起きた直後です。そしてほとんどは一時的なもので、しばらくすると元の精神状態に戻るものです。しかし、時には心の不調が慢性化してしまい、死にたい気持ちが生じたまま、なかなか消えなくなってしまうことがあります。

今回は死にたい気持ちへの対処法を、うつ病との関連から詳しく解説します。

心の危機のきっかけは様々だが、うつ病の場合は特に注意を

死にたい気持ちに陥ってしまうほど心が危機的な状態になる原因は、実に多様です。慢性的に気分が冴えず、気質的に空虚感を憶えやすい場合もありますが、多くの場合、例えば、「深刻な病気を抱えてしまい、健康がすぐれず不安」「仕事が激務で厳しく、精神的に辛すぎる」「大切な人と死別してしまった」「事情があり家族と離れ離れになってしまった」など、健康、仕事、家庭など、いずれの場合も何らかの解決困難な問題がきっかけとなることが多いようです。

ここで問題となるのは、「解決困難」というのは、「その時の自己判断で」ということです。たとえ何らかの合理的な解決策や未来への希望があったとしても、心が疲れきっていて、いつもと同じレベルの判断力、洞察力を失ってしまった状態では、解決策などを見いだすのは難しいかもしれません。そしてうつ病は気持ちの落ち込みと共に心身の機能をスローダウンさせ、いつもどおりの判断力、洞察力を失わせてしまう大きな原因となるため、特に注意が必要です。

希死念慮(きしねんりょ)と自殺願望の違い

「希死念慮(きしねんりょ)」という言葉があります。自殺願望はたとえば上記のように、解決困難と思える問題があり、そこから逃れる方法として死ぬことを考えてしまうことです。自殺願望を持つ人が、「仕事がうまくいかず毎日が辛い」「酷いいじめにあっている」「借金で首が回らなくなり、どうすることもできない」といった何らかの死にたくなってしまう理由を持っていて、それらから解放される方法として自殺を考えてしまうのに対して、希死念慮は特に理由はないけれど、何となく生きているのが苦痛で死んでしまいたいと思うことと区別されているようです。

しかし、「死にたい理由がない」という中には、本人が理由を理由として認めたくないということも含まれていると思います。その意味で、希死念慮と自殺願望を厳密に区別することは難しいのです。また、いずれも心の危険な状態であることに変わりはないため、対策として行うことも同様。いずれにしてもうつ病の可能性に注意して、精神科を受診すべきことに変わりありません。

死にたい気持ち・希死念慮・自殺願望とうつ病の関係

希死念慮にしても自殺願望にしても、死にたい気持ちが生じているとき、第一に注意すべきことは、上記にも述べた通り、うつ病の可能性がないかということです。うつ病を発症すると気持ちが落ち込み過ぎた状態になりますが、これはその方の心が弱いためではありません。脳内の神経伝達物質であるセロトニンなどの働きに問題が生じて起きる症状です。そのため、乱れたセロトニンの働きを元に戻す適切な治療を受ける必要があります。

うつ病になると心身の機能がスローダウンしてしまうため、思考力、集中力が低下し、物事を今までどおりに判断できなくなります。自分を悩ませている問題が必要以上に大きく見えやすくなるとともに、自責の念が増してきます。死にたい気持ちも生じやすく、心の苦しみから逃れるためには、自分で命を絶つことが唯一の解決策だと判断してしまう場合があるのです。実際、自殺者の多くは、自殺の時点で、うつ状態になっていたことが分かっています。もしも死にたい気持ちが生じていたら、うつ病が重症化している可能性があります。ぜひ、精神科(または神経科)をすぐに受診されることをお考えください。

死にたい気持ちへの対策法……まずは話しましょう

死にたい気持ちが生じるほど、心を危機状態に陥らせないためには、まず心の重荷を必要以上に深刻化させないことが大切です。悩みを自分の心の中にだけ秘めていては心の健康を損ないます。悩みごとの深刻度が、実態以上に心の中では大きくなりやすいからです。誰か信頼できる人に自分の悩みを話すことは、話すこと自体が心を軽くするうえ、その問題を新しい角度から見るきっかけにもなりますので、話せる機会は逃さないようにしたいものです。

また、ストレス対策も重要ですが、もしも、冴えない気分を癒す手段として、飲酒、ギャンブルなどに依存していないかにも注意が必要です。これらは依存が生じやすい上に、ストレス解消効果も一時的で、すぐに元の冴えない気分に戻ってしまい、悪循環に陥るリスクがあります。運動で汗を流すなど、より健康的なストレス対策法に挑戦してみてください。

最後に繰り返しますが、もしも現在、死にたい気持ちが生じている場合は、健康的な思考、正常な判断を妨げる「うつ病」が重症化している可能性があります。すぐに精神科(または神経科)受診を考えましょう。また、家族などの身近な方から死をほのめかすような言葉を聞かれた方は、軽く考えず、ぜひ精神科受診を促していただければと思います。自分は自殺願望などの考えには無縁だと感じている方は、正しく理解するために「「死にたい気持ち」は他人事ではない…背景に心の病も」記事も、ぜひご覧いただければと思います。
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