お守りのご利益は……「ありません」とは、決め付けられない?

お守りの効果・ご利益を信じ過ぎる注意点

「困ったときの神頼み」とも言いますが、普段はスルーしているかたでも、時には「お守り」にすがりたくなる時もあるものです

健康祈願、商売繁盛、入試必勝……。神社などに行けば、それぞれの願い事に合う、お守りも用意されているもので、しっかりゲットし、それをバッグに普段入れているかたもいれば、「幸運の○○」とキャッチの付いたモチーフなどを身に着けているかたも少なくないでしょう。実際、受験勉強中や何か病気が見つかった時は、その問題にご利益がある神社等をお参りすることもあるかもしれません。

また少し昔の話になりますが、組み紐の一種「ミサンガ」が、「自然に切れると願いが叶う」というフレーズと共に、サッカー選手たちから広まりました。そうした、お守り的なものには、それが一種のファッションといえるような要素もあります。

とはいえ、お守りの効果には、科学的根拠はないと言い切る方はいらっしゃるでしょう。それでも実際にそんな言葉をもし聞けば、「野暮なことは言わないで!」……と思われる方は少なくないと思います。そうしたかたの応援もかねて、今回は、お守りの効果を精神医学的な立場から詳しく解説します。
 

お守りの「効果」は持つ人がそれでどう変化できるか

歴史がある神社のお守りでも、あるいは何かゲンを担いだものでも、それを身に着けてから、物事が上手くいきだした、といった話はしばしば聞きます。

その科学的実証は難しいものですが、それをバッサリ非科学的だと決め付けては、幸運を呼ぶメカニズムに科学はないと言い切ることにもなります。そもそも、お守りのご利益には、それが出るまでの論理的過程など、私たちはあまり気にしないもので、本当に気になるのは、その結果だけでしょう。

心のうちが学業成就であれ商売繁盛であれ、そのお守りを身に着けたことで、気持ちがポジティブになり、毎日自分の力を充分発揮できれば、お守りのご利益は立派に現れています。たとえ、ご利益じたいは、それほどはっきりしない場合でも、そのお守りが、値が張るようなものでもなく、それからの毎日に特に問題もなければ、他人がそのお守りにケチをつけては失礼です。
 

「信じること」によるプラセボ効果も

お守りを信じない人にとって、それを信じて大事にしている人は、かなりナンセンスかもしれません。しかし、信じることは、お守りの効果を発揮するために、必要なことでもあります。

信じることが生み出す力は、医学的にも「プラセボ効果」として知られています。その「プラセボ効果」とは、治療薬の効き目を研究するような状況で現れる現象です。具体的な内容は、そうした研究に参加された一部の方は、実際には効果のない偽薬(プラセボ)を飲むことになります。その際、当人自身にその事実を全く知らせず、あくまで、その問題への治療薬として飲んでもらいます。すると、本当の治療薬しか出せないはずの効き目が、そうした一部の方の、そのまた一部に、ある程度現れるのです。それは、当人があらかじめ、それを信じているからです。

ここまで話が進めば、お守りには、それを信じることで、その効果が出てくることも分かりやすいと思います。そのお守りに期待する内容が、職場の出世でも、あるいは商売繁盛でも、それを信じることで、通常より気持ちが前向きになって、それぞれの課題に自信を持って取り組んでゆけば、結果的に望んでいた何かを得られるかもしれません。

一方で、「これを持っていれば、きっと良い結果が出る」と信じることは、場合によってはその裏返しに、「これを持っていないと、悪い結果が出る」と、いった気持ちが出てくるかもしれません。実際、いつも持ち歩いている何かを、大事な日に、例えば、大事な試験の日に忘れて、気持ちが動揺するような事態は本末転倒です。それを信じる気持ちは場合によっては時に自分の弱点になる可能性もあることは、どうかご注意ください。
 

依存が強すぎる場合、脳内に機能異常が発生している可能性も

お守りやラッキーチャームを信じて、それらを集めていたとしても、当人の日常が問題なく回っている限り、通常精神医学的には問題なしです。

しかし、お守りの「効果」には、一般に誰もが納得する科学的説明はないわけで、それでもそれを強く信じられるということは、根拠のない迷信等を信じ込む心理にも通じます。それをより広い観点から言えば、いわゆる「非合理的思考」です。もしもその傾向が強まり、それで生活に支障がはっきり出ている場合、注意が必要です。

例えば、ラッキーチャームなど、それを身に着けているだけでなく、その効果を確かにするために、何か儀式的な行為をする人もいらっしゃると思います。問題は、それがエスカレートして、それゆえに日常必ずやるべき、その何かができなくなっている状況が、精神医学的に注意したい状況です。脳内の機能に何か深刻な問題が発生している可能性もあります。その有無をはっきりさせるためには、精神科を受診するのが一番です。

もっとも、その当人だけでなく所属する地域やグループ内の人間の多くがそれを強く信じている場合、それがその範疇での「文化」でもあります。そうした際は日常生活に何か支障が出ていても、その解釈は、非合理的なことを信じる精神症状とはとらないで、単なる文化の現われと、みなすことが適切な場合もあります。

以上、今回はラッキーチャーム等も含め、広い意味でのお守りの効能を精神医学的な立場から解説しました。なお、それに関する科学的な論点などに関しては、精神医学的な問題ではないので、ここでは特に触れません。言い換えれば、それにケチをつけるつもりはありません。ここで言いたいことは、これまでお守りに効果がないと考えていた人も、「気持ちをポジティブにするツール」として試してみる価値はありますよ、といったことです。

なお、お守りの類には上記のような精神症状に関連する要素もあるということも、皆さまどうか頭の隅にでも置いておいてください。

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