強迫神経症・不安神経症・パニック障害

時計を見ると4時44分…不吉な数字と心の病気

【医師が解説】時計を見ると4時44分、駐車場で空きスペースを見つけたら「9」、ホテルの部屋に案内されたら「413」。数字は単なる数字ですが、数字そのものが何か不吉なものを表していると感じることは文化的にもあるものです。しかしこれが極端になり日常生活に問題が出ていれば、精神医学的な問題として注意すべきことがあります。精神病性障害的な問題と不安障害的な問題について、詳しく解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

不吉な数字が気になるのは心の病気か

444の数字

標識、部屋番号、ふと見た時計が不吉な数字だったら……。日常生活に支障が出るほど気になる場合は注意が必要です

4、9、13など何となく不幸を連想させるような数字は、不吉と考えられて避けられることがあります。語呂合わせも含めてこのような数字にこだわる人もいれば、全く気にしない方もいます。

気になる場合も普通は当人の個性の範疇で済むことで何も問題はありませんが、この傾向が極端になってしまえば話は別です。生活に支障が出るレベルになっていれば、精神医学的に注意したい問題が関わっている可能性もあります。

今回はこうした不吉な数字や番号に動揺してしまう方が、どのような状況の場合に心の病気を考慮すべきか、詳しく解説します。
 

時計を見ると4:44……444のゾロ目は不吉なメッセージ?

たまたま見た時計が「4時44分」。4の数字が並んでいるのを見た時、何となく不吉な感じ、嫌な感じがするだけであれば、精神医学的には気にすることはありません。しかし、あたかも時計から死(4)のメッセージが送られてきたような気持ちになってしまう場合、いくつかの注意すべき問題があります。

4という数字は発音上「死」を連想させるとして、死に関する何か不吉な連想を強めやすい数字と捉えられることがあります。実際に4という数字を避けることは程度の差はあれ日本では一般的な部分もあり、いわば、私たちの文化の一要素と見なせる面もあると言えるでしょう。

しかし、やはり数字は数字です。合理的に考えれば、4という数字自体が不吉な何かを表すことなどないはずですし、実際に人生では何度も4などのいわゆる不吉な数字やそのゾロ目を見てきたと思いますが、その度に不幸なことが起こったというような経験はないでしょう。それにもかかわらず、もし不吉な印象のものに対する不安感が通常ないほどに高まっている場合、合理的な思考力が弱まり、思考の非合理性が強まっている可能性もあります。

また、4:44という数字の並びに嫌な感じを覚えるだけでなく、時計があたかも自分にメッセージを送りつけてきたと感じる場合、「関係念慮」と呼ばれる精神症状との類似が見られます。関係念慮とは、まわりの誰かの話し声、あるいはまわりの何かが、自分に対する何かしらの当てつけ、あるいは自分に何かのメッセージを伝えている気がすることを指します。関係念慮は、何が現実で何が非現実か、その境が揺らいでいるサインの1つで、いわゆる精神病性の症状の1タイプとされています。こうした問題は時に統合失調症などの前触れとして現われる可能性もあります。

ただ、これでただちに精神科(神経科)を受診すべきかというわけではありません。しっかり押さえるべきポイントがあります。それはまず「自分自身がそのことにどの程度気付いているか」ということです。「不吉な数字でとても気になるけれども、時計が死のメッセージを伝えてくることなどない」ということがよく分かっていれば、現実と非現実の違いははっきりしています。統合失調症など、いわゆる精神病性障害に含まれる疾患群のレベルではありません。

一方で、こうした問題が以前には全くなかったのに最近になって急に現われてきたような時は、やはり注意が必要です。単なるストレス要因では片付けられない問題が潜んでいる可能性もあります。それは必ずしも精神疾患とは限らず、内分泌系の問題など何らかの身体疾患が原因の可能性もあります。その際は、まわりのご家族などが、自分では認識できていない、以前にはなかった何らかの問題に気付いていることもあります。周りにも相談し、やはり普通ではないと感じる場合は、まずは精神科(神経科)などで相談されることをおすすめします。
 

4という数字への反応が恐怖症に近い状態の場合

「4」という数字を嫌がる際、不吉な数字として何となく嫌だと感じるのは一般的だと思います。しかし単に嫌いというレベルではすまない場合もあります。例えば恐怖症(フォビア)に近い感覚の対象例として、多くの人が当てはまるのがゴキブリやヘビでしょう(これはゴキブリやヘビという生き物そのものに対してネガティブな意味合いで取り上げるわけではありません。ゴキブリやヘビが好きな方はその点をご了承ください)。

一般に何かをひどく嫌いになってしまうと、毎日の生活を送る上でその影響がはっきり現われてくるものです。例えばゴキブリは噛みついてくるわけでも毒を持っているわけもありませんが、目にするだけで不合理なほど嫌悪感を感じる方は少なくないかもしれません。全く無害なヘビでも、見るだけで鳥肌が立って、とてもその場にはいられなくなるという方もいると思います。もし同じスペース内にいるとわかったら、はっきりした実害がなくても駆除しようとしたり、自分がその場所を離れたりするでしょう。どんな方法であれ、その対象をできるだけ避けようとするはずです。そしてしっかり離れられることで落ち着くならば、日常生活に大きな問題はないでしょう。こうした場合、不合理なほど恐怖感や不快感を覚えても精神科で対処する必要はあまりないといえます。

しかし、この恐怖症に近いものの対象によっては、避けることが難しいものもあります。その1つが数字に対する恐怖感です。例えば「4」という数字に上述したゴキブリやヘビに対するような感覚を覚える場合、避けるのはかなり大変です。職場での大事なミーティングが4日の4時になることもあるでしょうし、旅行先のホテルの部屋が404号室かもしれません。しかし、これは場合によっては嫌いな気持ちを治していくチャンスにもなります。

例えば、どうしても「4」という数字に不安感、さらには恐怖感を覚える方も、大事なミーティングならば出席しないわけにはいきません。それで嫌な気持ちがしたとしても、無事にそのミーティングをクリアできれば、その気持ちが軽くなるだけでなく、4という数字に対する嫌な気持ちにも折り合いがついていくかもしれません。このように嫌いな対象にその時に可能なレベルであえて直面し、慣れていくことで克服していくのは、恐怖症に対する治療法の一つである行動療法の基本的なポイントでもあります。

そしてもし4時44分といった数字が並ぶのを見た時にあたかも突然ゴキブリに遭遇したかのような強いショックを感じたならば、これはいわば不安発作が起きたとみることもできます。その発作の内容や深刻さによってはパニック発作と診断できるレベルになっている可能性もあります。もし仮にそのようなことがあれば、気持ちの落ち込みなど、精神科領域で対処すべき問題が他にあるかもしれません。すぐ精神科を受診されることをおすすめします。

以上、今回は不吉な数字に動揺しがちな方が注意したい精神医学的な問題を、精神病性障害的な面からと不安障害的な面からの2つの面から詳しく解説しました。いずれの場合もその状況によっては精神科で相談することが望ましい場合もあることは、不吉な数字にこだわってしまう方はどうか頭に置いておいてください。

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