人格障害とはどんなもの? 解答編
1.変わっている人は人格障害?答:いいえ 変わっている人だからといって、人格障害とは限りません。考え方や行動、ライフスタイルが社会の一般基準から、かなりはずれている時、変わっているとみなされやすいですが、その性格が元で、社会にうまく適応できず、本人が不幸を感じている時、初めて、人格障害の可能性が考慮できます。人格障害の症状は10代後半頃から始まることが多く、人格障害は完璧主義の傾向が強いもの、ナルシスト的傾向が強いものなど、全部で10種類ほどあります。
2.人格障害は心の病気?
答:(厳密には)いいえ 人格障害は、精神医学では、うつ病、不安障害といった心の病気と同列に扱われていません。性格は本人の個性の一つなので、病気とみなすには難があるからだと思います。しかし、日常生活に大きな支障が生じているという点においては、うつ病、パニック障害といった心の病気と比べて、決して軽く見ることはできません。また、人格障害では、うつ病や不安障害などの心の病気を合併しているリスクが高くなります。
3.人格障害は稀で、ほとんどの人には関係ない?
答:いいえ 人格障害は決して、稀ではありません。人格障害の頻度は全体の数%位ですが、7人に1人は人格障害に相当するという米国の報告もあり、人格障害は意外にありふれたものかもしれません。人格障害の多くは、自分の考え方や行動に問題があるという認識がなく、精神科を受診することはあまりありません。また、人格障害は一つだけとは限らず、複数持つことがしばしばあります。
4.人格障害は遺伝する?
答:いいえ(一部、はいの部分もあります) 人格障害の原因としては、遺伝的な面だけでなく、家庭や社会的環境なども重要です。本人の生物学的特徴、例えば、脳の神経伝達物質の働きといったことは、親から子供へ伝えられるDNAによって規定されているので、人格障害には遺伝的側面があります。また、幼児~小児期に虐待などのトラウマを受けたり、母子関係が過保護で、いわゆる親離れが出来ない時には、人格がスムーズに成長できず、人格障害が現れやすくなります。
5.治療を受けると、人格障害は簡単に治る?
答:いいえ 「三つ子の魂、百まで」という言葉もあるように、本人の性格を変えるのは容易ではなく、人格障害は、簡単に治るというものではありません。しかし、治療によって、生活の質を改善することは可能です。
治療としては、気分の落ち込み、不安症状などがある場合は、薬物療法によって対処します。また、心理療法によって、本人が性格的な問題を抱えていることを理解し、職場の人間関係といった日常問題をより現実的に対処できるように手助けします。
しかし、人格障害では治療において、幾つか問題点があります。そもそも、精神科を受診する必要があると思っている人は少ないし、医師との治療関係においても、問題が生じる可能性があります。例えば、ナルシスト的傾向が強い人は、自分だけの特別な治療を要求したりといったことが起こり得ます。
6.多重人格障害は人格障害の一つ?
答:いいえ これは、よくある誤解のひとつです。多重人格障害は、自分の心の中に複数の人格が宿っているという、心の解離症状が特徴的で、心の病気の中では、解離性障害というグループに属しています。
7.どんな時に人格障害の症状が強く出現しやすい?
答: 人格障害の症状には、波があり、強く現れる時も、あまり目立たない時もあります。家庭や職場などでストレスが大きい時には、現実対処能力が低下し、問題点が現れやすくなります。どんな事が強いストレスになるかは、本人の経験したトラウマなどによって、差が出てきます。例えば、ナルシスト的傾向の強い人は、他人のちょっとした批判にも傷つきやすくなります。
ところで、人格障害には、その語自体にネガティブな響きがあると思いますが、要は、性格に難ありということです。誰にでも、性格に良い部分と難しい部分があり、ストレスがたまると、性格で難ありの部分が出やすくなってしまいます。もしも、家庭や職場でうまくいかない事が続くようなら、原因は相手だけではなく、自分にもあり得ることをお忘れなく!
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