◆冬期に暴れるウイルス性食中毒◆
食中毒の原因は、一般にサルモネラ、病原性大腸菌O-157などの細菌性食中毒、あるいはフグやキノコなどに含まれる自然毒食中毒が知られています。
また食中毒と言えば、湿気が多く菌の繁殖しやすい梅雨から夏の時期というイメージがあります。しかし冬季にはウイルス性食中毒が頻発し、その大多数はノロウイルスというウイルスが原因です。
NVによる食中毒はアメリカ合衆国で年間約181,000例の患者が発生しています。 日本でも1998年に厚生労働省の食中毒統計に加えられて以来年々増加し、2001年には食中毒患者の3割りを占め、毎年10月頃から1 ~2月をピークに全国的に流行しています。ただ、感染しても深刻な症状ではないので、健康な人が神経質になる必要はありません。
◆古株なのに、わからないことばかり◆
ノロウイルスは、1972年に米国で発生した集団胃腸炎患者の糞便から直径約30nmの小型の球形ウイルスとして発見されたため、小型球形ウイルス(Small Round Structured Virus : SRSV)と呼ばれていた古株のウイルス。SRSVという名称は最近まで用いられ、2002年夏の国際学会で最初に患者が出た米国の町の名前をとってNVと名づけられました。
ところが、このウイルスは培養も動物感染実験もできないので不明なことが多く、今その解明に精力的に取り組んでいる段階。ですから、どうやって感染するかのか、またどうやって防ぐのかなどの情報が提示されていないために多発するという見方もあります。治療に関してもNLV の増殖を抑える薬剤はなく、せいぜい整腸剤や痛み止めなどの対症療法しかないそうです。
◆ノロウイルスに感染すると・・・◆
症状
摂取後1~2日後に突然吐き気に襲われ、嘔吐や下痢が続きます。また、頭痛、発熱、咽頭痛などカゼとよく似た症状が見られることもあります。後遺症はなく、発病したら水分を十分にとり安静にすれば1~2日で完治します。
感染ルート
●ヒトの小腸で増殖したノロウイルスは糞便中に排泄され、下水から河川、海へと流出します。カキ、ホタテ、トリガイなどの二枚貝は,水の中に拡散した糞便中のウイルスを吸い集める性質があり、中腸腺に蓄積するため、未加熱で食べることで感染します。特に沿岸部で養殖されているカキやホタテ貝などは一日に120~600リットルもの海水を体内に循環させ、ウイルスが蓄積されやすいそうです。
●また食べ物以外にも、便や吐物に触れた手や指で食品を汚染ことで二次感染します。感染者の吐物をふいた雑巾から二次感染した例もあります。
予防
■貝類は、よく加熱してから食べる。
NVは熱に弱いため、貝を85度以上で1分以上加熱すれば、感染力はなくなる。
■体調が悪い時は、生では貝を食べない。
元気な時なら平気でも、体調が悪い時、特に子どもや老人など、抵抗力の低い人が感染しやすい。
■トイレの後、料理の前・食事の前には、必ず手をよく洗う。
■キッチンの調理器具も消毒する。
■貝類などの調理に使った水が、他の食材にかからないようにする。
■衛生的処理がなされないまま、糞便を投棄するのはやめる。
糞尿をそのまま投棄するような行楽用ボート、感染者の漁業関係者の糞便による汚染を防ぐ。
■吐物など、ウイルスを含む汚染物の処理にも注意が必要。
◆根本的解決は、人間次第??◆
2002.11.16日付の朝日新聞によると、貝の汚染対策は難問なのだとか。大阪府の調査では、生食用カキの2~3割にはウイルスが見つかり、生食用は、生産海域や細菌数について国の規格はありますが、ウイルスの条件はないそうです。また貝に蓄積したウイルスを取り除く方法もありません。
秋田県衛生科学研究所の斉藤博之主任研究員は、「下水処理システムを改善し、海をきれいにしなければ、根本的な解決にはならない。カキも被害者」と述べています。
NVだけでなく、ボリビア出血熱、ラッサ熱、エボラ出血熱などの感染症は、第二次世界大戦後に交通機関の発達により他の地域に運ばれるようになり、また世界的な人口増加や森林破壊によりウイルスの隠れ家がなくなることで、ヒトに感染する機会が増大したのです。私たちの健康を脅かすものの根っこは、たどってみると私たち自身が蒔いた種だった・・・、ということが案外多いものなんですね。
■関連リンク
ノーウォーク様ウイルス感染症
(IDWR感染症の話)
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