節税対策/経営者・個人事業主の節税対策

経営者個人の節税(2ページ目)

中小のオーナー企業経営者の場合、会社と個人の両方の節税対策を同時に講じる必要があります。そこで、経営者個人が実際に活用しやすい節税対策をご紹介します。

今村 仁

執筆者:今村 仁

中小企業・個人事業主の節税対策ガイド

保険は会社で加入する

中小企業の経営者の多くは、会社の借入に際し自宅を担保に提供したり保証人となったり、会社と経営者はまさに一蓮托生といえるでしょう。もしもに備えて効率的にリスクヘッジをする手段の1つに、法人契約で加入する生命保険があります。

経営者個人で生命保険に加入した場合、いくら加入したとしても所得控除額は最大10万円(一般生命保険料控除額5万円・個人年金保険料控除額5万円)しかありません。例え一般生命保険料を年間100万円支払っていても所得控除額は5万円となり、所得税率が最高40%の人でも5万円×40%=2万円の節税にしかなりません。一方、会社で加入した場合は保険の種類によっては支払い保険料の全額が費用となります。

契約者が会社、被保険者が社長などの役員、保険金受取人が会社となる掛け捨ての定期保険に年間100万円を支払った場合、100万円が費用となり課税所得金額が少なくなります。実効税率30%とした場合は100万円×30%=30万円もの節税となります。キャッシュとしては100万円支払ったが30万円取り戻したということになります。経営者個人で支払っている生命保険を会社契約に切り替えることで、大きく節税になります。

相続税の非課税枠をフル活用する

相続税の対象となる死亡保険金には、法定相続人1人につき500万円の非課税枠があります。具体的には、死亡保険金が2,000万円で法定相続人3人(妻、子供2人)の場合、500万円×3人=1,500万円は非課税となり、残り500万円だけが相続税の課税対象となります。また、生命保険については受取人を生前に指定できるので、遺産分割協議の対象とはならず、自分の死後に渡したい人に現金を渡すことができます。

次に相続税の対象となる死亡退職金ですが、こちらも法定相続人1人につき500万円の非課税枠があります。例えば死亡退職金が1,500万円で法定相続人が3人の場合は500万円×3人=1,500万円が非課税枠となり、死亡退職金1,500万円は相続税が課税されずに残された遺族に渡すことができます。

役員や使用人の死亡に際し、弔慰金を支払う旨を定めている会社があります。会社は、その金額が社会通念上妥当な金額の範囲内であれば福利厚生費として費用とすることができます。受け取る側はというと、一定額までは税金がかかりません。
弔慰金の非課税枠

                   弔慰金の非課税枠


これらの非課税枠を超える部分については、死亡退職金とみなされます。例えば、給与100万円の経営者が業務上の事故で死亡した場合、最大100万円×36か月=3,600万円を無税で遺族に渡すことができます。

死亡退職金と弔慰金については、いくら非課税枠があったとしても会社に財源がなければ、せっかくの非課税メリットを享受することはできません。生命保険などを活用し、資金をプールしておくことが重要です。

110万円暦年贈与を最大限に活用する

贈与税は相続税を補完する税金で個人に対して課税され、受贈者(もらった方)が納める税金です。税法上は年間110万円までの贈与については非課税としており、贈与税の申告義務がありません。贈与者(あげた方)が複数いる場合でも、受贈者(もらった方)1人につき年間110万円まで非課税となっています。

この暦年贈与は、法定相続人以外にでも有効です。孫や嫁、他人に対しても適用できます。例えば現金110万円を孫に20年間贈与した場合、2,200万円もの現金を孫に移動させることができます。ただし、現金の贈与については、受贈者(もらった方)の通帳や印鑑を贈与者(あげた方)が保管している場合には、税務署が贈与者(あげた方)の名義預金とみなす可能性があります。また元々1,000万円を贈与する予定で毎年110万円ずつ分割して贈与したことが明らかな場合は、1,000万円の贈与があったものとみなされ贈与税が課税されることもあります。

110万円暦年贈与は毎年にすると少額ですが、「塵も積もれば山となる」で長期間における相続税対策に有効といえます。
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