社会人入試の対策は入念に!
社会人の大学・大学院進学を成功させるためには、まず情報収集、次に提出書類と試験の両方について準備を始めます。社会人入試対策(出願書類編)では、出願書類準備について説明しましたが、今記事では小論文試験と面接試験について詳しく説明します。
<目次>
社会人入試は準備した人としない人では差が歴然
高校生が大学受験時に、一度も練習をしないで小論文を書くと偏差値30くらい。少し勉強すれば偏差値50程度に、さらに1年間しっかり勉強すれば偏差値60~70くらいになるそうです。短期間でこれほど偏差値が変わるとは驚きですね。つまり小論文対策をしっかり行った人とそうでない人では、雲泥の差があるのです。社会人入試の場合、小論文と面接が課されることが多く、この2つの対策をしっかり取り組むかどうかが合否の分かれ目となります。
小論文とは問題提起し根拠を示し論理的な文章が求められる
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小論文は作文とは違います。小論文とは、テーマに関して自分なりに問題提起し、それについて根拠を示し、読み手を説得させます。作文に求められる書き手の感性豊かな言い回しなどは不要で、いかに論理的で説得力ある文章を作者なりの視点で書けるかどうかが、小論文では重視されます。また受験生の各専攻分野に関する基礎知識や適性などもチェックされます。
合否を分けるという小論文ですが、どういったものを書けば合格レベルと呼べるのでしょうか? 20年以上小論文指導を行っている小論文指導ゼミナール白藍塾樋口裕一氏は、著書『まるまる使える入試小論文』の中で良い小論文の定義について次のように言っています。
- イエスかノーかの結論がはっきり下されている
- イエスかノーかの理由に説得力がある
- 人の気づかないような深みにまで踏み込んで判断を下している
小論文と作文の違いや、よい小論文(合格する小論文)を書くために必要な力については、Benesseマナビジョン小論文教室が分かりやすいので参考にしてみて下さい。
「樋口式4部構成の型」で書け!
小論を書き始めようとすると、どのように展開していくべきか悩む人がほとんどです。しかし小論文には定型があります。論理的な小論文を書くには、樋口氏が薦める下記のような4部構成の型を使うと書きやすいでしょう。- 第1部 問題提起
- 第2部 意見提示
- 第3部 展開
- 第4部 結論
■第1部 問題提起
小論文全体の10%ぐらいの分量が適当
- 設問について、イエスまたはノーで答えられるような形に問題提起する。
- 賛否両論がある
- 自分の手に負えるものにする
- その場で調べなくてすむものにする
■第2部 意見提示
小論文全体の30~40%ぐらいの分量が適当。ここでは、第1部で提起した問題に対して、自分がイエスかノーか、どちらの立場を取るかを決め、問題となっている事柄の現在の状況を正しく把握する。「確かに~。しかし~。」という型(パターン)を使って、反対意見に考慮した上で自分の意見を示す。
例)確かに株式会社は株主の利益を考えなければならない。しかし、その結果として、安全性への配慮が二の次になることは問題だ。
■第3部 展開
小論文全体の40~50%ぐらいの分量が適当。小論文の中心部分。ここの展開の仕方によって小論文の価値が決まる。問題となっている事柄の背景、原因、歴史的経過、結果、背後にある思想など、目に見えない、もっと深い部分を掘り下げて書く部分。自分が持っている知識と、社会的に大きな理念をからめると書きやすい。
■第4部結論
小論文全体の10%以下の分量でよい。
- イエスかノーかを断定する。
- 努力目標や余韻を持たせるような締めくくりの分は必要ない。
小論文作成の基本ルールは自分を指す一人称は「私」とする
小論文を作成するにあたり、最低限守るべきルールは下記の通りです。ここでは紹介していませんが、原稿用紙の書き方は忘れている方も多いと思いますのでもう一度確認しておきましょう。- 文体の統一「だ、である」を使う
- 自分のことは「私」と呼ぼう
- 誤字脱字に注意! 書いたら必ず読み返す
- 字数制限は必ず守ろう! 字数を超えたら0点になることも
- HB以上の濃い鉛筆を使おう!薄い字は採点者からは読みづらい
まるまる使える入試小論文
小論文が上達するポイントは過去の質問と専門家の意見に着目
新聞をうまく活用しよう
1.新聞を読もう!
新聞を読む。これは、どの小論文指導塾でも推奨している小論文上達のコツです。小論文では社会問題をテーマにしたものが多く出題されるため、社会問題を広範囲にわたって知るためには、新聞が最適。また新聞には様々な人たちの意見が論文の形で掲載されており、小論文の手本としても使えます。これらの記事を日頃から数多く読み、自分ならどのように論理展開するか、実際に書いて練習しましょう。
大学入試において、新聞からの出題では朝日新聞が知られています。2009年度の大学入試では、朝日新聞の記事を引用した出題が社会人入試も含め260大学500問題542記事で1位だったそうです。若干古いのですが2005年度の出題傾向分析(朝日新聞調べ)によれば、朝日新聞のどのページから引用されたかを調べたランキングでは、文化面が第1位、以下2位:オピニオン(私の視点、声)、3位:社説、4位:天声人語、5位:総合となっています。
ASA菊名ホームページによると、5月から10月までに掲載された記事からの引用が多いそうです。理由は「入試問題の作成者が問題作成にとりかかる時期と重なります。この時期の新聞記事は問題作成者の目にとまりやすく、出題率が高くなっています(ASA菊名ホームページより)」とのこと。
2.過去問題入手及び最近の傾向分析
大学入試問題は、その大学や専攻によって傾向が異なります。過去問題を入手して傾向を知り、対策を練るのも有効な小論文対策の1つ。過去問題は、各大学がインターネット上で公開していたり、印刷物として配布していることもあるので、志望大学の入試課に問い合わせてみましょう。小論文指導校や進学予備校などで扱っている場合もあります。
3.書きっぱなしはダメ!専門家の指導を受けよう!
実際に書いた小論文は必ず他の人に読んでもらい、添削を受けましょう。できれば予備校や塾など小論文指導専門家の指導を受けたいものです。
なぜなら、対策本などで小論文の書き方をマスターしたとしても、自分が実際に書いた小論文が合格ラインに達しているかそうでないかは、誰かに読んでもらわなければなかなか判断できるものではないからです。
小論文添削の専門家によると、指導を受けていない受験生の小論文は、課題に対して感想を述べただけの作文や、論点そのものがあやふやな小論文などに偏りがちだそうです。しかし専門家の添削を数回受けると、抜群に良い小論文が書けるようになると言います。それだけに他の教科に比べ、上達しやすい科目と言えるでしょう。
最低でも2回~3回程度は、大学の先生や専門家に添削してもらい、自分が書いた文章のどこがいけないのか、どこを直せばいいのを確認してから入試に臨みましょう。
面接が重視される社会人入試
面接では相手の目をみてはっきりと!
ほとんどの社会人選抜で面接が課されており、大変重要視されています。面接は事前に提出した書類(志望理由書や研究計画書)をもとに質問がされることがほとんど。事前提出書類に書いたことは何を聞かれても答えられるように準備し、質問に対する答えも志望理由書との矛盾がないようにしましょう。
面接でよく聞かれる質問は志望理由や仕事との両立や研究テーマ
社会人入試の面接は、個人面接からグループ面接まで学校によって様々。どのような面接であっても落ち着いて自身をアピールできるように準備したいものです。
では実際に面接において、どんなことを聞かれるのでしょうか? 通常質問される例としては、
- 志望理由
- 大学で何を勉強したいのか
- なぜこの大学を選んだのか
- 卒業後のキャリアプラン(進路等)
- 職場や家族の了解は得られているか
- 仕事との両立は出来るのか
- 試験と重要な仕事が重なった場合どうするか
- 学費は誰が出すのか
- 研究テーマ設定の理由
面接対策ではまず質問を想定し、実際に回答の練習をしておくと効果的。部屋の入退室から着席、回答などの練習は実際に最初から最後まで通しで何度かやってみましょう。
質問に答える際には、最初に「はい、その件に関しては~」と「はい」とつけると好印象です。回答を丸々暗記していくと試験官には必ずばれ、かつあまり良い印象ではありません。回答文はいくつかのキーワードに絞って頭に入れておくようにし、質問にはその場にふさわしい言葉で自然に答えられるようにしておきましょう。分からないときは知ったかぶりをせず、素直に「分かりません」と伝えても大丈夫です。その際「後で調べてみます」という趣旨の一言も付け加えましょう。
社会人入試の面接は、いわゆる就職試験と同じだと思ってください。社会人としての礼儀作法を忘れず、相手の目を見てしっかり話すことが大切です。この大学で学びたいという熱意やコミュニケーション能力、大学に貢献できる人材かどうかなどを見られます。
スーツがオススメ、面接の服装
清潔感のある服装を
社会人入試の服装はどういったものがよいのでしょうか? ほとんどの大学・大学院は、特に指定がない限りは、自由な服装でかまわないとしていますが、実際のところはどうなのでしょう。
東京大学大学院に社会人入試で入学した人は、スーツで受験に臨んだそうです。「内部進学ではなく外部受験の場合は、スーツの方が無難ではないかと思います」と薦めています。
立教大学大学院を修了した社会人学生も、面接にはスーツで行ったとのこと。他の受験生達もスーツで来ており、女性は普通にカチッとした格好だったそう。「面接は相手に不快感を与えない、ビジネススーツであれば問題ないと思います」と言っています。
受験生を面接する側の意見も紹介しましょう。
「服装のルールはありません。インフォーマルなコメントとしては、社会人らしく小ぎれいな格好で健闘して頂きたいと思います」(東京大学大学院准教授)
「服装はスーツでなくても構いません。特に土日に小論文試験および面接が行われるため、カジュアルな服装で来られる方も多いです。(もちろん、社会人大学院の面接ですので、スーツで試験会場に来ること自体に違和感があることは決してありません」(筑波大学大学院准教授)
服装については「スーツでも普段着でもいい」という大学・大学院が多いようですが、やはり社会人として無難なのは、受験時の気候、季節に合ったスーツでしょう。清潔感のあるシャツを合わせ、室内の寒暖にも対処できるようなものを選び、面接に臨みたいものです。服装に自信を持つことで、面接もきっとうまくいくはずです。
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