ゲーム機業界の儲けの構造。2階建てマーケティングとは?
今回、ソニーが発売したPS3のようなゲーム機の儲けの構造は2階建てになっています。1階部分はハードウェア販売に伴う損益機会。企業はゲーム機自体を販売して利益を得ることができます。そして2階部分はソフトウェア販売に伴う損益機会。ハードウェアのみではできることが限られていますから、購入者はゲームなどのソフトウェアを購入しなければいけません。つまり、企業はハードウェアを販売した後で、ソフトウェアを販売することによりさらなる損益機会を創出することができるのです。このようにゲーム機業界では、ゲーム機というハードウェアを普及させれば、それに伴うソフトウェア販売による利益が見込めます。ソフトウェアの開発費は莫大なものもありますが、実際に販売するCD-ROMやDVD-ROMなどの製造原価は微々たるもの。いったんヒットに恵まれれば、利益率は非常に高いものになります。たとえ自社でゲームを開発しなくても、協力ゲームメーカーからの収入も見込めます。
そのような理由から、ゲーム機メーカーは躍起になって自社のハードウェアを普及させる活動に注力しているのです。そして、ゲーム機を普及させるためにはたとえ赤字でもまずは多くの消費者に手の届きやすい価格でゲーム機を販売し、そのハードウェアの赤字分をソフトウェアの利益で補填していくというマーケティング戦略が採られることになるのです。
他にもある赤字で販売するマーケティング戦略
携帯電話も端末での赤字を通信料で補填する2階建てマーケティングの典型。 |
まずわかりやすいところで言えば、携帯電話。携帯電話の端末は今ではテレビを見ることができたり、音楽が聴けたり、インターネットに接続ができたりと非常に多機能な電化製品に進化してきました。製造原価も数万円することでしょう。ところが、営業店ではこのような高価な携帯端末を安いところでは“0円”で販売しています。まさに1台売るごとに数万円の赤字となるのです。
ゲーム機と同じように携帯電話も儲けの構造は2階建てになっています。まずは端末の販売収入、そして通話料などの毎月の収入です。ここで携帯電話会社は端末を販売して儲けるよりは、端末を無料で配って利用者を拡大し、毎月の通話料で収入を得ていくほうが遥かに高い収益を上げることができます。
他にもインクで利益を上げるプリンターメーカーや利用料で利益を上げるインターネット接続プロバイダーなど2階建ての儲けの構造を持つ企業は当初赤字でも積極的に商品やサービスを販売していきます。