マーケティング/マーケティング事例

PS3 vs. Wii その明暗を分けたものとは?(2ページ目)

2007年10月25日、PS3とWiiの販売台数が発表となりました。結果はWiiの圧勝。機能的に圧倒的優位に立つPS3ですが、なぜWiiの独走を許したのか? マーケティングの観点から両者の明暗を分けた謎に迫ります!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

PS3とWiiの売上の明暗を分けたものとは?

Value Proposition
顧客は実のところ商品やサービスを求めているわけではない!
PS3とWiiの売上の明暗を分けた根本的な理由は、「顧客は実のところ商品やサービスを求めているわけではない」というところにあります。

「えっ? 顧客は商品やサービスを求めていないってどういうこと?」と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。ただ、これは間違ってお伝えしたものではありません。この考え方はマーケティングにおいて非常に大事な考え方ですからもう一度繰り返しましょう。

「顧客は商品やサービスを求めているわけではない」のです!

たとえば、今あなたが新しいコンピューターが欲しいと仮定しましょう。ただ、コンピューターというのは言ってみれば“鉄やプラスチックの箱”であり、その製品自体をあなたが欲しているわけではないでしょう。あなたにとって真のニーズは、コンピューターを使って、文書作成ソフトや表計算ソフトなどで仕事を効率化したり、いろんな音楽をインターネット経由でダウンロードして聴いたりすることではないでしょうか。言ってみれば、あなたはコンピューターという商品を利用することによって自分の欲求を満たすメリットであるとかベネフィットを望んでいるというわけです。

このような商品やサービスの持つメリットやベネフィットをわかりやすく顧客に伝えていく企業の活動はマーケティングでは、Value Proposition(価値提案)と呼ばれています。

企業が顧客に商品やサービスをアピールする際にはその商品やサービスの機能の素晴らしさを伝えるのではなく、その商品やサービスが顧客にとってどのようなベネフィットを持つのかというValue Propositionを行う必要があるのです。Value Propositionを行うことによって商品は“単なる物”から、そしてサービスは“単なるサービス”から、顧客にとって“価値のあるもの”へと変わっていくというわけです。つまり、企業は「顧客にとって自社の商品やサービスの価値とは何か?」を深く考え、わかりやすくそのベネフィットを伝えていかなければならないのです。

Value Propositionの観点に立てば、顧客は最高の機能や性能を求めているわけではなく、自分にとって最高の価値や満足を与えてくれる商品やサービスを求めているということが理解できます。

製品の機能が優れていれば売れると考えるのは企業側の論理であって、顧客にとっては機能面では劣っていても、自身の欲求を満たす価値のある提案が企業側からあれば、機能が劣っている製品でも高い満足度を実現できます。企業は顧客にとって自社製品の何が、どのように優れているのかを伝え、本当に価値のある製品だと理解してもらえば、機能が劣る製品でも市場で競争優位性を発揮することができるというわけです。

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