ビジネスマナーでの敬語・言葉遣いのルールや注意点とは?
一般的に相手を思いながらあれこれと気を配ることを「心遣い」といいます。言葉も「言葉遣い」と書くように、届ける相手に対する配慮が必要です。言葉は、その人を直接的に表現します。話している内容が正しくても、思いやりの精神に欠けていたり、言葉遣いがおかしければ、相手はその人を社会人として一人前ではないと判断するでしょう。内容さえも正しく受け取ってくれないかもしれません。ビジネスの場では、それにふさわしい言葉遣いがあり、敬語はその最たるものです。敬語が正しく使えなければ、ビジネスパーソンとしての信用は得られないでしょう。そこで、敬語の重要性、敬語の基本ルール、ビジネスシーンでよく使う敬語の使い方と注意点を説明します。
■ビジネスでの敬語
敬語はビジネスマナーで欠かせない、相手を敬う丁寧な言葉遣い
「ちょっと待っててよ」と「少々お待ちいただけますか」は、同じ意味ですが、印象は全く異なります。前者は、友人や家族など親しい間柄で使う普段着の言い方で、プライベートで使う言葉遣いです。後者は、目上の人や社会的地位の高い人、顧客や得意先、初対面の人などに対する敬語を使った丁寧な言い方です。このように、私たちは日常生活のなかで同じことを言うにしても、相手によって、状況によって、さまざまな言い方をしています。つまり、「言葉遣い」を使い分けているのです。話し手が、聞き手や話題にしている人物を高めて表現する言葉遣いが「敬語」です。字が示すように「人を敬うための言葉遣い」です。つまり、思いやりの気持ちがこもった言葉遣いのことです。
ビジネスパーソンにとって適切な敬語を話すことは、周囲との人間関係を築いていくための基本といえるでしょう。同時に、あなたに対する信頼を強めていくために欠かせないビジネスマナーであり、あなたの教養や人格のバロメーターでもあるということです。ビジネスシーンで適切な敬語が使えないと、仕事の内容に入る以前に、あなたの人間性や信頼性まで疑われる可能性もあります。だから、敬語はとても大切なのです。
ビジネス敬語の種類は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」
相手に対する敬意を示すために使う言葉が敬語です。その敬意の示し方によって、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類に分けられます。■尊敬語
相手や相手の動作、状態などを直接高め、尊敬の気持ちを込める言い方。尊敬語には、次の3つのグループがあります。
1.尊敬の意味を表わす「お・ご・御・貴」などの接頭語を名詞につけるグループ
例:お考え、お仕事、ご家族、ご訪問、貴社、御社
2.それ自体が敬語の意味を表わす語のグループ
例:おっしゃる(「言う」の尊敬語)、召し上がる(「食べる」「飲む」の尊敬語)、なさる(「する」の尊敬語)
3.「れる・られる」「ご(お)…になる」などをつけ加えるグループ
例:お読みになる、お越しになる、お帰りになる、ご覧になる
■謙譲語
自分をへりくだり、間接的に相手を高める言い方。自分の動作、状態に使います。
1.謙譲の意味を表わす「弊・拝・愚・ども」などの接頭語・接尾語をつけるグループ
例:弊社、拝見、拝受、愚考、私ども、手前ども
2.それ自体が謙譲の意味を表わす語のグループ
例:お目にかかる(「会う」の謙譲語)、いただく(「もらう」の謙譲語)、拝見する(「見る」の謙譲語)
3.「お…する」「ご…いただく」などをつけ加えるグループ
例:ご招待いただく、お喜び申し上げる、お持ちする
■丁寧語
話し手が自分の言葉を丁寧に言うことで聞き手への敬意を示す言い方。
丁寧語には、次の2つのグループがあります。
1.「です」「ます」「ございます」を語尾につけるグループ
例:こちらが営業部です、地下に駐車場がございます
2.名詞に「お」「ご」をつけるグループ
例:毎日お暑い日が続きます、部長からごほうびをいただきました
ビジネス敬語・言葉遣い「5つのルール」
取引先などの「社外の人」と「自社の人」を区別し、対外的には自社の人を「身内」として捉える日本社会の慣習が大きく影響しているため、ビジネスシーンで使う敬語にはプライベートでは使わない独自のルールがあります。大きな特徴は、誰に対して敬意を示しているのかによって、使う敬語が異なってくることです。1.お客様、社外の人にはすべて敬語を使う。
例:「いらっしゃいませ、どうぞご案内いたします」
2. 社外の人と話す時は、自社の者は、上司であって敬語は使わない(敬意を示すのは社外の人に対して)。
例:「部長の○○を紹介します、その件は課長の○○が説明します」
3. 社内では、上司や先輩には敬語、同僚には丁寧語を使う。
例:「部長がおっしゃったように、資料をご覧ください」
4. 社内外を問わず、自分の肉親には敬語を使わない。
例:「母が上京します」「父が事故に遭いました」
5. お客様や他社の話をする時は、どんな場合でも敬語を使う。
例:「先方の担当者からご提案をいただきました、A社の○○様とおっしゃる方からお電話がありました」
ビジネスで間違いやすい敬語、言葉遣いの一覧
日常よく使うビジネス敬語は、スラスラ口から出てくるように覚えておきましょう。苦手な人は、例文を作りそれを覚えておき、応用できるようにしておくことが望ましいです。例えば「見る」
- 相手に対する尊敬語では「ご覧になる」
- 自分がへりくだって行なう謙譲語では「拝見する」
■ビジネスでよく使う動詞の尊敬語・謙譲語・丁寧語の一覧
間違いやすい敬語の一覧/尊敬語と謙譲語の使い方は注意が必要!
ビジネスシーンで間違えやすい敬語を次にまとめておきます。その多くは、尊敬語と謙譲語の使い方の誤りです。- 「相手の動作」に対して使うのが「尊敬語」
- 「自分の動作」に対して使うのが「謙譲語」
■相手の動作に謙譲語を使わない
× 詳細は担当者に伺ってください
○ 詳細は担当者にお尋ねください(または)お聞きください
× プレゼンの資料は3階で拝見してください
○ プレゼンの資料は3階でご覧になってください、または、ご覧ください
■謙譲語を尊敬語のように使わない
× 経理部で旅費をいただかれてください
○ 経理部で旅費をお受け取りください
× 不明な点は私にお伺いください
○ 不明な点は私にお尋ねください
■身内に敬語を使わない
× 課長は、ただ今、席を外していらっしゃいます
○ 課長は、ただ今、席を外しております
■慣用的な二重敬語以外の二重敬語は避ける
ひとつの言葉に尊敬の表現を重ねてつける「二重敬語」には、日本語として定着している慣用的な表現があり、一概に誤っているとはいえません。たとえば「どうぞ、ごゆっくりお召し上がりください」は、「召し上がる」と「お(ご)……ください」が合体した二重敬語ですが、違和感はありません。それでも、たとえばレストランを予約したり、高級デパートで領収書をもらったりする際に担当者から発せられる
「そちら様のお名前様をお伺いさせていただきます」
「お名前様を頂戴いただけますでしょうか?」
などは明らかに過剰敬語で、聞いた人にくどい印象を与えます。耳ざわりで慇懃無礼な印象すらあります。丁寧に話すことは必要ですが、言葉の厚化粧は限度を超えると滑稽に思えるものです。気をつけて使いましょう。
言い回しを間違えると不満をもたれてしまう「依頼時のビジネス敬語」
ビジネスシーンで頻度の高い言い回しのひとつが、社内外の人に対して何かを依頼することです。プライベートなら「書いてください」「待ってください」と表現するところですが、ビジネスシーンで使う命令形の言葉は、一方的で反発を抱かれやすいもの。特に上司や得意先、お客様は、「どうして私が君に命令されなければいけないのか」と不満を抱きかねません。そこで、「こちらにお名前をご記入いただけますか?」
「少々お待ちいただけますか?」
といった疑問形の敬語に変換することをおすすめします。疑問形の語尾に相手の意向を伺う姿勢がこめられているため、相手の同意を得やすいのです。ちょっとしたことですが、敬語を活かす言葉遣いといえるでしょう。
ビジネスシーンで口グセは禁物
普段友達と話す時のくだけた口調は、ビジネスシーンでは必ずビジネス敬語に切り替える必要があります。気をつけたいのが、よく使っている普段の口癖が自然に出てしまうことです。特に近年は、内容をまぎらわせ、曖昧にする表現が目立ちます。それらの口癖があなたの品性を低め、相手に不愉快な思いをさせるかもしれません。商談の最中に「…みたいな」「ってゆうか」などと口走らないよう、十分気をつけてください。ビジネスシーンで禁物の口癖には、次のようなものがあります。
- 「えーとですね」
- 「やっぱ」
- 「○○的には」
- 「マジっすか?」
- 「……みたいな」
- 「……というか、……ってゆうか」
- 「……とか」
- 「……だったりして」
- 「……じゃないですか?」
言葉遣いは、その人の人格を表わすもの。内容をまぎらわせ、曖昧にして表現する人は、自分の言動に責任を負いたくない人だと判断されます。自己中心的で、相手への配慮に欠ける人だとも思われるでしょう。その反対に、適切な言葉遣いのできる人は周りから高い評価を得ることができます。そして、敬語を含めた言葉遣いが、その人の人間関係に潤いをもたらすのです。
「さあ、食べろ」と言われるより、「どうぞ召し上がってください」と言われた方が気分が良いでしょう。相手は同じ意味のこと言っているのに、どうしてなのでしょうか?それは、「この人は、私を大切にしてくれている」「この人は、私に対して敬意を払ってくれている」と感じるからです。自分に対する思いやりの気持ちが伝わってくるからです。
これこそが、言葉遣いや敬語が宿す力です。しかも、誰もが使える言葉遣いなのです。あなたも敬語を上手に使って、相手との円滑なコミュニケーションをはかってください。
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