マンション購入術/マンション購入の失敗・トラブル

検証!判例に学ぶ集合住宅の駐車場問題(2ページ目)

集合住宅での3大トラブル「騒音」「ペット飼育」そして「駐車場」。「専用使用権」をめるぐマンション駐車場のトラブルに関する法的対応策を伝授します。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

分譲方式駐車場の問題点


◆敷地の二重売買

マンションなど区分所有建物の敷地は戸建住宅とは性格が異なります。マンションでは敷地全体を専有部分の床面積割合に応じて按分する敷地(利用)権となり、区分所有者全員の共有となります。要するに居住者全員の大切な財産に相当します。

ところが、特定の区分所有者が“居住者全員の財産”である敷地の一部を買い取り、同時に専用使用することはまったくもって不自然です。当該分譲駐車場部分が二重使用されたことに等しく、居住者全員と分譲駐車場の購入者の両方が所有者となってしまうのです。

さらに、分譲駐車場の売却代金は不動産会社に帰属し、管理組合が手にすることはありえず、また分譲方式駐車場の購入者が別途、駐車場利用料を管理組合に支払うことも、まず、あり得ません。従って、分譲駐車場方式は不動産業者がマンションの敷地の一部を二重に売買していることに等しいのです。

区分所有権を売却した際の分譲駐車場の取扱い


分譲駐車場の購入者が自ら購入した住戸を第三者へ売却した場合、「分譲駐車場の権利は特定承継人(新たに売却住戸を購入した人)に引継ぐことが問題ないのかどうか?」という問題です。

分譲方式ではなく、抽選や先着によって敷地内駐車場の使用を認められた区分所有者が住戸(専有部分)を売却した際に、今まで使用していた駐車場の権利も一緒に転売できるかというと、答えはNOです。

国土交通省が管理規約の指標として作成している「標準管理規約」では、「区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者へ譲渡または貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効果を失う(第15条3項)」とされており、仮に「駐車場の専用使用権を承継する」旨の記述が売買契約書の中にあったとしても、管理組合に対しては法的効力はありません。いくら特約をつけても、駐車場の使用権は譲渡できないのです。

◆では、分譲方式の駐車場ではどうなるのか?

通常の使用契約の場合は区分所有権と一緒に譲渡できない点は、かわったと思いますが、分譲駐車場の権利に関しては区分所有権と合わせて「駐車場付きマンション」として売り出すことは可能なのでしょうか?


次ページで実際の裁判例をもとに、検証してみます。
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