なぜトラブルを防げなかったのでしょうか?
コミュニケーション・ミスが原因? |
プログラムを修正、追加した場合、まず開発側で作成したテストデータを元にシステムテストを行い、次に本番データを使ってテストを行います。
月や年をまたぐ月末・月初処理は基本中の基本ですので、おそらく実施したはずです。この時に不具合を発見し、修正したのでしょう。この作業は本番環境でテストを行うわけにはいきませんのでテスト環境で行います。
この後、ユーザー側で検収テストを行います。いわゆる納品・検品です。
会社の大切な経営資源である情報システムの変更ですので、現場の判断だけでは当然できません。役員会に報告され、ここで決裁されます。
この時点でシステムに対する責任が開発側からユーザ側に移ります。ITベンダーにとっては、システム開発費の請求ができる大切なマイルストーンでもあります。
本番移行でミスをした
この後、テスト環境から本番環境へプログラムを移行します。トラブルはこの時に発生しました。皆さんもホームページをサーバーへアップロードする場合、ハードディスクの中でホームページのリンクなどを確かめてからアップロードすると思いますが、それと同じような作業です。またアップしたはずなのに画像ファイルを漏らしていたとか、違うフォルダーに入れてしまったなどミスをよく起こす作業でもあります。
システム開発の現場でも同じです。そこで作業指示書にはアップロードするプログラム名、削除するプログラム名以外にサイズ数(修正するとプログラムサイズが変わる)や修正日付、アップロードする本数、削除する本数、最終的に本番環境に格納される本数などを記載します。
アップロードした後、プログラム名の日付やサイズが変わっているか目視チェックを行います。一人で行うとミスが発生しますので、複数の目で行います。また本数でもチェックを行い二重、三重にミスを防ぎます。今回はこれができなかったのではないのでしょうか。
システム開発がわかっていない経営陣
気になったのが11月1日記者会見における経営陣の発言です。おそらく全銘柄にわたり売買が停止するという初めてのトラブルに遭遇しての発言だったのでしょうが、詳しい原因も特定されていない段階で富士通に対する損害賠償について言及していました。
システム開発に関わった経験のある人なら、「えっ、何で?」と思ったことでしょう。
本番環境へ移行した後ですので、システムに関する責任はユーザー側にあります。トラブルがあろうとなかろうと検収した東証側の責任です。もちろんシステム開発をした富士通には瑕疵担保責任があり、バグがあれば無償で修正しなければなりません。(通常は1年間程度)
東証と富士通がトラブル時には損害賠償請求があるという契約を結んでいたら別ですが、通常はありえません。発言を報道で聞いた時の第一印象は東証の経営陣はシステム開発について分かっていないんだろうなでした。