企業のIT活用/システム導入事例

東京証券取引所システムダウンの真の原因とは?(3ページ目)

東京証券取引所で11月1日、システム障害が発生。午前中の取引が全面停止という異常事態となりました。原因はどこにあったのでしょうか探ってみましょう。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

ベテランSEが手薄だったのではないか

ベテランSEが手薄だった?
ベテランSEが手薄だった?
今回はテスト環境から本番環境へのプログラム移行でトラブルが発生しました。
ミスがよく発生する作業ですので富士通や東証コンピュータシステムのベテランSEが見逃すとも思えません。

考えられる原因はいくつかありますが、修羅場をくぐり数多くの経験を積んだベテランSEの配置がうまくいっていなかったことが考えられます。

現在のシステム開発は複雑化・高度化しています。10年前に100の開発プロジェクトがあり、現在も100の開発プロジェクトがあったとしてもボリューム的には10年前の10倍になっています。10年前で言えば1000の開発プロジェクトがあるのと同じです。

ベテランSEに育つまで何年もかかりますので、頭数が揃いません。必然的に一つの開発プロジェクトに配置されるベテランSEは減ってしまいます。

また東証コンピュータシステムは1961年に東証の機械設計部門が分離した東証の関連会社ですが、2002年3月にプライムシステムの傘下に、2004年10月に富士ソフトABCグループの傘下にと親会社が変わっています。資本関係が変わった時に東証のシステムに精通しているベテランSEが転職などで手薄になった可能性があります。

スケジュールに余裕がなかったのではないか

もう一つはベテランSEが配置されていましたが、開発やテスト期間が短く、きめ細かく対応できる状態ではなかったということです。

ミスを防ぐために色々と考えなければいけませんが、テスト環境から本番環境へプログラムを移行する作業は一回だけです。的確に作業をやらなければいけないと考えながら余裕がなく作業手順をショートカットしてしまった可能性があります。

作業指示書には移行&削除するプログラム名だけを記載し、おそらくプログラムの全体本数などは書かずに渡してしまい、本数による二重チェックができなかったのではとないでしょうか。

全体本数に基づきチェックをしていれば、本数の違いに気がつき修正したプログラムと旧のプログラムの混在をふせげたはずですがこれが漏れたのでしょう。

開発側とユーザー側のベテランSE双方に余裕がなく、そういう作業指示をしてしまったとしたら本当の原因はITの土地勘がない経営陣にあります。

複雑化・高度化するシステム

NASAがスペースシャトル用に開発したプログラムは1ステップ(1行)あたり、およそ1000ドルのコストをかけて徹底的なテストを行い、バグをなくしました。

プログラムは年々、複雑化・高度化しています。社会保険庁から現在のレガシーシステムを置き換えるには2650万ステップ必要という見積が出ています。(社会保険オンラインシステム刷新可能性調査)

銀行オンラインシステムなどは大体40万ステップから100万ステップです。もしNASAと同じようにバグをなくすことを目指すのならば10万ステップのテストだけで100億円かかってしまいます。(10万ステップ×1000ドル×100円/ドル)

つまり現在の複雑化・高度化したシステム開発でバグなしを目指すのは不可能ということです。ITに土地勘がないとこういった感覚がわかりません。

土地勘がないと納期通りに決められた仕様とコストでシステムが出来上がるものだと考えています。これは奇跡にちかい話で、うまくいかないのがあたりまえということがわかっていません。

うまくコントロールして、それほどコスト増や納期遅れをせずにシステムを作り上げても、「なぜ決められた通りに出来あがらなかったんだ!」と叱責するのがITに土地勘がない経営陣です。

では、どうすればよかったのでしょうか >>
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