当初の判断
複雑な銀行システムの統合、しかも3行の統合ということで、システム担当役員などが集まり、話し合われました。出た結論は第一勧銀のシステムを使い、他の2行のシステムは廃棄するワンバンク方式を採用することでした。各銀行の異なるメーカーのシステムを一つに集約する、実にシンプルで妥当な判断です。カットオーバー(運用開始)まで2年間という時間があり、十分にシステムテストを行う時間も確保できるという判断もありました。
また、何かあったとしても第一勧銀のシステムだけに注力すればよく、ターゲットをしぼることができます。
あとは、この判断に従い、プロジェクトを立ち上げ、スケジュールを引き、要員を確保して、作業をすればよかったのですが、この後に、迷走していくことになります。
主導権争いへ
ワンバンク方式の採用という合意の後に出てきたのが不満です。自分が使い慣れたシステムを使いたい、今まで競合してきた銀行のシステムが使われて、なんでウチのは駄目なんだというような面子みたいなものも出てきます。結局、横槍が入って、二転三転してしまいました。行き着いた結論は、3行の基幹システムを残して、その間に中継コンピュータを入れるという玉虫色の結論です。この結論が出るまでに貴重な1年間が浪費されてしまいました。
Simple Is Best!
・ワンバンク方式(1台のシステム)のシステム拡充
・基幹(3台)+中継(3台)の6台のシステム開発・修正
で簡単なのはどちらでしょうか?
「ランチェスターの法則」を持ち出すまでもなく、当然ワンバンク方式の方が簡単です。
1つの対象を圧倒的な兵力で攻めれば負けるはずはありません。対象が増えれば、兵力も分散され、しかも対象間のインターフェースの複雑さが増し、ますます難しくなるのは自明の理です。
結局、システムテストが不十分でカットオーバーを迎えることになり、トラブルに直面することになります。
他にもオープン系に十分に対応できなかった、金融系の大規模システムに対応できるSE不足なども原因として上がっていますが、致命的だったのが、当初の方針をひっくり返した点でしょう。
実はこの根本原因は、たった一つのことを忘れていたからです。