IT導入で忘れてはならないのが、導入の前に現在の仕事のやり方を見直すこと。ITは手段であって、目的ではありません。あくまでも仕事が円滑に遂行できるよう支援するためのツールです。現状の仕事の流れを見直さないでITを導入すると、結局は使われないシステムを増やすことになります。

秀吉が薪奉行に任命される

秀吉が薪奉行に任命される

秀吉が薪奉行に任命される

ある日、秀吉が信長に呼び出されました。

秀吉:「殿、まいりました。」

織田信長:「おう、猿か。そちには今度、薪奉行を勤めてもらう。」

秀吉:「ありがたき、幸せ。この猿、粉骨砕身、勤めさせていただきます。」

織田信長:「あいかわらず返事はよいが、できるか?」

秀吉:「殿、心外な。この猿、必ず薪代を半分にしてみせます。」

信長は城の維持管理に費用がかかりすぎていると感じていました。これから美濃攻めもあり、節約できる費用は少しでも減らしたいとも考えていました。 そのため、まずは手近な薪代の節約から手をつけ改善を行い、全体への波及をねらうことにしました。誰を薪奉行に任命しようかと考えた時、清洲城の塀の普請で今までと違ったアプローチを行った秀吉に、指揮をとらせようと判断。

秀吉も自分が薪奉行に任命されたのは、前例踏襲ではなく今までと違うアプローチが期待されていることがよく分かっています。秀吉はまず、薪の管理方法など仕事の流れをチェックするため、城の担当者を回って、どういう仕事をしているのか聞き取りを行いました。

最初は、猿めがまた出しゃばってきおってという周りの雰囲気でしたが、そこは持ち前の愛嬌で、聞きだしていきます。

秀吉はいろいろと聞き出して、仕事の流れをチェックしましたが、大きな問題は特にありませんでした。

「さすがは信長殿の家臣だ。色々と仕事の流れをお聞きしたが、どこにも問題がなかった。実にきっちり仕事をしている。このことは殿にも報告をしておくので安心するように。」

人間、ほめられれば、うれしいものです。またあとの協力も得やすくなります。

「じゃが、薪代がかかっているのも事実だ。そこでだ、お城に納入される薪の価格について調べたい。誰か帳簿を持ってきてくれないか。」

帳簿から薪が一度に納入されていることが判明

帳簿を調べると薪が一度に納入されていることが判明

帳簿を調べると薪が一度に納入されていることが判明

秀吉が帳簿をチェックすると、秋に薪が一度に納入され、代金が支払われていることが分かりました。 薪が蔵に山積みされ、城ではそれを毎日取り出して使っていました。さっそく秀吉は担当者に聞いてみました。

秀吉:「なんで、薪が一度に納入されているんだ?」

担当者:「昔からそういう形でずっとやっていますもので。」

秀吉:「例えば、何回かに分けて納入してもらったらどうなんだ。」

担当者:「たくさん一度に買い上げているので、その価格で納めてもらっています。分けて買うことになれば割高になりますよ。それに、納入に対する検品も一度ですむのが、納入の度に行う必要があり、作業が大変になります。」

秀吉:「うむ。そうか。」

秀吉、分割納入の交渉を行う

秀吉、山間の村へ出かけて薪の分割納入を交渉する

秀吉、山間の村へ出かけて薪の分割納入を交渉する

秀吉はそれ以上は何も言わず、ある日、薪を作って城へ納めている山間の村へ出かけていきました。

秀吉:「お主が、村長か。ものは相談だが、お城への薪の納入を一度ではなく、10日に一度など分割して納入することはできるか?」

村長:「それは願ったりかなったりで。」

秀吉:「どういう意味だ?」

村長:「実は、一度に薪を納入せよというお達しで、そのために村に薪を貯めておく蔵を作っております。また城まで運ぶため、近隣の村から荷車や人足を調達しており、お金がかかって仕方がありませんでした。10日ごとであれば、その間に作った薪を貯めておくだけでよいし、その程度の量であれば、ご城下に誰か買い物へ行くついでに、荷車に乗せて運ぶことも可能です。」

秀吉:「そうか。そもそも、なぜ一度に薪を納入せよという話になったのだ?」

村長:「昔は織田の殿様のお城も小さく、一括で納めさせていただくことが理にかなっておりました。ですが尾張全域を支配される規模になられてからは私どもの方がたいへんになりまして。」

秀吉:「なるほどな。では今後は10日に一度で納入してくれ。」

それから秀吉は近隣の村々をまわって同じような交渉を行いました。