■防犯カメラ?それとも監視カメラ?

兵庫県の分譲マンションでは共用部分の床や壁を傷つけるイタズラや、指定日以外のゴミ出しなどが後を絶たず、注意を呼びかけた張り紙にまで落書きされる始末。そこで考えたのが防犯カメラの増設だ。エントランスや駐車場、ゴミ置場などに設置したところ、マナー違反がめっきり減ったという。ゴミ出しなど日常生活のマナー向上に監視カメラを活用するマンションが目立ってきた。ルール違反の抑止効果は抜群で、防犯目的で導入されたものをマナーチェックに活用するケースだ。


(日本経済新聞 2003年12月6日より抜粋)


上記は以前に新聞に掲載されていた記事ですが、実に感慨深い内容です。昨今の新築マンションでは最新鋭のセキュリティをセールスポイントとして販売していますが、裏を返せばそれだけ世の中が物騒になっていることの表れであり、決して手放しで喜べることではありません。「平和ボケしている」と諸外国から皮肉がられる日本人にも、自己防衛の意識が芽生えてきたのでしょうか?

今年2月に450万件を超える個人情報が流出して社会問題にまで発展したヤフーBB(ソフトバンク)の孫(そん)社長が謝罪会見の席で「社員を犯人扱いの目で見なければならない」といった発言がとても印象的でしたが、日経記事が伝える居住者のマナーチェックもその心理には管理組合にも孫氏にも共通する“あせり”が見え隠れしています。


■ぶち当たる「プライバシー」の壁

既存マンションでは防犯カメラを新たに導入する管理組合が増えています。「ピッキング」「サムターン回し」さらに車上荒らし・・・。最近は管理会社や公的機関を装った詐欺まがいの悪質訪問販売までが登場し、心配や不安を抱くマンションが導入に踏み切っています。ほとんどの管理組合でカメラを新設すること自体に反対はしませんが、「モニター監視は誰がするのか?」「録画データの取り扱いはどうする?」といったプライバシーは誰もが神経質になります。とあるマンションでは

「エントランスに防犯カメラを導入したおかげでピンクチラシがなくなった」
「ペットと一緒にエレベーターに乗るときに、飼育者が抱きかかえるようになった」

といったプラス面がある一方で

「カメラに写るのを嫌気して、裏口から出入りする人が目立ち始めた」
「居住者に監視されているようで息苦しい」
「内緒でペットを飼っているので、愛犬を散歩に連れ出す回数が減った」

というようなマイナス面も無視できません。まさに、プライバシーの功罪といえます。


■「外」にいる敵、「内」にいる敵

前出のヤフーBB事件では個人情報流出の犯人が内部にいたことが判明しましたが、日経新聞が伝えるマナーチェックもその犯人は居住者に他ならず、チェックしなければならない対象は「外」だけではなく「内」にもいることを示唆しています。

集合住宅はその構造上・利用上の特殊性があり、だれかれが何の不満もなく快適な生活を送ることは難しいとされています。ひとつ屋根の下、生活習慣も教育環境も、さらに価値観も異にする人達が『共同生活』をするなかで、摩擦がないほうが不自然かも知れません。マンションは主要な居住形態としてすっかり定着していますが、日本全国でおよそ10世帯に1世帯はマンション暮らしをしている現状において、誰にとっても快適な住環境を保全するには活路を「居住者のマナー」に見い出すしかありません。

他人に文句をいう前に、まずは“わが身”を振りかえることから始めてみましょう。「解決のカギ」は自分のなかに潜んでいるかもしれません。


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