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自民・民主、社会保障マニフェストの比較(4ページ目)

いよいよ衆議院議員選挙が公示になりました。7月末に発表された自民、民主のマニフェストのうち、社会保障分野の政権公約について比較してみました。

執筆者:宮下 公美子

高齢者医療については?

2008年4月から導入され、名称、内容共に大きな批判を浴びた後期高齢者医療制度。この制度についても障害者自立支援法同様、大幅な見直し、あるいは廃止と、いずれにせよ、両党とも現状のまま維持という意思はないようです。

[自民党]
◆高齢者医療制度等の見直し◆
現在の高齢者医療制度は、市町村国保に比べて75%の世帯で保険料が軽減され、保険料格差も2倍に縮小されているが、すべての世代の納得と共感がより得られるよう、高齢者の方々の心情に配慮し、75歳を過ぎたサラリーマンの方は、引き続き支える側として、現役の制度に加入し続けられるようにするなど、年齢のみのよる区分を見直す。また、高齢者の保険料負担が過大にならないよう、公費負担の拡大に取り組むなど、現行の枠組みを維持しながらよりよい制度への抜本的な改善・見直しを行う。
所得の低い方については、保険料の9割軽減措置を継続すると共に、外来の患者負担の月額上限を半減する。


[民主党]
◆後期高齢者医療制度を廃止し、国民皆保険を守る◆
【政策目的】
○年齢で差別する制度を廃止して、医療制度に対する国民の信頼を高める。
○医療保険制度の一元的運用を通じて、国民皆保険制度を守る。
【具体策】
○後期高齢者医療制度・関連法は廃止する。廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する。
○被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的運用を図る。
【所要額】
8500 億円程度


後期高齢者医療制度を維持するか廃止か、方針が異なっている両党。自民党は、年齢だけで区切るのをやめて、就労している方については現役世代の保険制度に加入するという案を出しています。一方、民主党は、後期高齢者医療制度は廃止。被用者保険と国民健康保険をいずれは統合して一元的運用にするという案です。

後期高齢者医療制度は疾病の発生リスクの高い人だけを集めた保険で、いわば、75歳以上の方に自分自身で疾病リスクを下げていかないと保険料が高くなるよ、と言っているようなものです。制度設計自体に無理があり、廃止は止むなし、という専門家の声もあります。存続させる必要があるのであれば、自民党はなぜ必要なのかをマニフェストでも分かりやすく訴えるべきだったのではないでしょうか。

民主党の保険制度一元的運用については、実際、どのようにするのかがイメージできません。段階的な統合について、もう少し詳しく説明してほしかったと思います。被用者保険(事業所勤務者の健康保険)は事業所と働いている人が保険料を折半しています。一方、自営業者などが加入する国民健康保険は被保険者が保険料を全額負担しています。統合した場合、保険料は全額被保険者負担になるのでしょうか。

これまで事業所が負担していた健康保険料分は給与に上乗せするという法的な拘束でもしない限り、被用者保険の被保険者の納得は得られないと思いますし、なかなか実現は難しいように思います。

以上、自民党、民主党のマニフェストの中から、社会保障関連政策の代表的なものを取り上げて比較してみました。

本来、マニフェストは達成期限と具体的に実施する施策、数値目標を明示し、有権者に対して実現を約束するものです。こうして改めて両党のマニフェストを見てみると、マニフェストをまとめている担当者が違うせいでしょうか、分野によって、具体性、政策の密度に差を感じました。

その分野についての専門知識のある人材がいなければ、具体的で細かい政権公約をまとめるのは難しいと思います。公約として掲げることができないことは当然、達成することもできません。密度が低いまま放置されている分野は、専門分野の知識を持つ人材がいないか、その分野を重視していないかのどちらかです。いずれにせよ、その分野で有効な施策が展開されるかどうかには疑問を持たざるを得ないでしょう。

各施策について、現状の問題点はどこにあるととらえているのか。党として目標をどのような点に置いているのか。目標に近づけるために具体的になにをすべきと考えているのか。それをいつまでに達成するつもりなのか。そんな道筋を示してくれないと、十分な比較検討、検証はできません。今回、それを改めて感じましたし、もう少し具体的なレベルで比較できる施策を打ち出してほしかったと感じました。

しかし、違いが感じられる部分が若干あったので、各党の政策について全く何も検討しないよりは、読んだ意味はあったと思います。みなさんも、一度各党のマニフェストに目を通してから投票してはいかがでしょうか。

関連リンク

自民党マニフェスト「政策BANK」
民主党マニフェスト
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日本共産党マニフェスト「総選挙政策」
国民新党マニフェスト「2009政権政策」
新党日本マニフェスト「日本『改国』宣言」
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