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自民・民主、社会保障マニフェストの比較

いよいよ衆議院議員選挙が公示になりました。7月末に発表された自民、民主のマニフェストのうち、社会保障分野の政権公約について比較してみました。

執筆者:宮下 公美子

2009年8月18日、いよいよ30日投票の衆議院議員選挙が公示になりました。マスコミの報道では、ついに政権交代かと言われていますね。どの政党を選ぶにせよ、多くのかたが、前回の郵政民営化選挙のときのようにそのときの「気分」や「雰囲気」、「ノリの良さ」で選ぶとあとでたいへんなことになる、ということだけは身にしみて感じているのではないでしょうか。

では、どういう観点から選べばいいのでしょうか。今回は7月末に発表された自民党、民主党のマニフェストのうち、社会保障分野の政権公約について比較してみました。
※民主党は、衆議院議員の任期である4年以内に達成する「マニフェスト」とは別に、達成期限を区切らず、政策議論の到達点がどのような内容かについてまとめた「民主党政策集INDEX2009」も相前後して発表していますが、今回の記事ではマニフェストに書かれた内容に絞って比較しました。

介護職の処遇改善など介護関連の施策は?

まず初めに、介護職の待遇改善やサービスの充実など、介護関連の施策について、自民党、民主党はどのような政権公約を掲げているかを見てみましょう。

[自民党]
◆介護サービスの改善と職員の処遇改善◆
地域の介護ニーズに応え、今後3年間で、特養、老健及びグループホームの約16万人分の整備を目標に取り組む。介護に携わる人材が意欲とやりがいを持ってサービスを提供できるよう、介護報酬の3%アップに加え、介護職員の処遇改善に努める事業主に対して職員の給料一人当たり月平均1万5千円の引き上げに相当する金額を助成し、専門性と職務の重要性に応じた賃金体系の普及・定着を目指す。また、現任介護職員の研修やキャリアアップの支援、介護労働者の職場環境の改善を進める。
なお、平成24年度の介護報酬改定時においては、介護保険料の上昇を抑制しつつ、介護報酬を引き上げる。療養病床再編成については、適切に措置する。


[民主党]
◆介護労働者の賃金を月額4 万円引き上げる◆
○全国どこでも、介護の必要な高齢者に良質な介護サービスを提供する。
○療養病床、グループホーム等の確保により、介護サービスの量の不足を軽減する。
【具体策】
○認定事業者に対する介護報酬を加算し、介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる。
○当面、療養病床削減計画を凍結し、必要な病床数を確保する。
【所要額】
8000 億円程度


自民党マニフェスト
自民党マニフェストの表紙に麻生総理の顔写真はない。「表紙に載せるな」と本人が指示したらしい
自民党は介護職員の処遇改善について、介護報酬3%アップ+処遇改善助成金、1人あたり月平均1万5000円で「専門性と職務の重要性に応じた賃金体系の普及・定着を目指す」とのこと。「定着を目指す」ということは、月1万5000円の助成金を継続的に支給してくれるのでしょうか。そのあたりまで明記してほしいものです。

一方の民主党。認定事業者への介護報酬加算で月額4万円アップを図るとのこと。現在、介護職員に支払われている平均賃金は23万5693円※1。これに対して一般労働者の平均賃金は29万9100円※2ですから、実は4万円アップしても一般労働者に追いつきません。しかし、待遇改善には実効性がほとんどなかった介護報酬3%アップとプラス1万5000円よりはありがたい話です。もっとも、そんなお金はどこから出てくるの?という素朴な疑問はありますが…。

また自民党は、今後3年間で約16万人分の特養、老健、グループホームの確保を掲げています。2006~2008年の介護保険事業計画では、全国で約15万2000人分の介護保険施設を確保するという目標が掲げられていました。しかし実際には、目標の約半分である7万5000人分しか確保できていません。

施設入所の待機者は約40万人と言われています。入所を待つ間に、高齢者虐待が起こる危険性もあります。今回再び「今後3年間で16万人分」という目標値を掲げるのであれば、半数しか確保できないような結果にならないよう目標値実現のための具体策まで示して欲しかったと思います。

最後に、療養病床について「適切に措置する」という記述がありました。このような具体性のない、付け足したような施策をマニフェストに載せる意味がわかりません。

一方、民主党は、療養病床は当面、削減を凍結して必要な病床数を確保するとしながら、療養病床、グループホーム等の確保で、「介護サービス量の不足を軽減する」と、これもおおざっぱな表現。介護サービス量の不足をどの程度ととらえているのか、どの程度療養病床、グループホーム等を確保して、不足をどの程度軽減しようとしているのか。具体的な数値を挙げていないため、実現の可能性、達成意欲を評価できません。また、特養等の施設数等についてどのように考えているのか、マニフェストでは触れられていませんでした。重要視していないのでしょうか。

※1 「平成20年度 事業所における介護労働実態調査結果」(2009年7月・介護労働安定センター発表)より
※2 「平成20年賃金構造基本統計調査(全国)結果」(平成21年3月・厚生労働省発表)より
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