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自民・民主、社会保障マニフェストの比較(3ページ目)

いよいよ衆議院議員選挙が公示になりました。7月末に発表された自民、民主のマニフェストのうち、社会保障分野の政権公約について比較してみました。

執筆者:宮下 公美子

医療制度については?

医師不足での病院閉鎖による地域医療の崩壊、産科医不足や救急医療体制の不備による、救急患者のたらい回し頻発など、様々な問題が起きている医療の現場。これに対する両党の政策提案はどうでしょうか。

[自民党]
◆医療基盤整備・医療体制の安心確保◆
必要なときに救急医療や産科医療を受けられる体制をつくり、救急医療や産科・小児科・へき地医療の担い手である勤務医を確保する。今年度は医学部定員を約700人増員したが、今後も医療確保のために、医師数を増やすとともに、これまでにない思い切った補正予算を通じ、地域医療の再生や災害に強い病院づくりを進める。医学教育の充実と勤務環境の改善や救急医療体制の整備等、地域医療の砦たる大学病院の医療体制を整備し、医師偏在の解消へ向けた臨床研修医制度とする。社会保険病院・厚生年金病院については、地域医療の確保の観点から必要は病院機能を維持するよう対応する。診療報酬は、救急や産科をはじめとする地域医療を確保するため、来年度プラス改定を行う。


[民主党]
◆医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供する◆
【政策目的】
○医療従事者等を増員し、質を高めることで、国民に質の高い医療サービスを安定的に提供する。
○特に救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建し、国民の不安を軽減する。
【具体策】
○自公政権が続けてきた社会保障費2200 億円の削減方針は撤回する。医師・看護師・その他の医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する。
○OECD平均の人口当たり医師数を目指し、医師養成数を1.5倍にする。
○国立大学付属病院などを再建するため、病院運営交付金を従来水準へ回復する。
○救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建するため、地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行う。
○妊婦、患者、医療者がともに安心して出産、治療に臨めるように、無過失補償制度を全分野に広げ、公的制度として設立する。
【所要額】
9000 億円程度


医師(養成)数を増やす、産科、小児科、救急等の医療体制を再建するという点は両党で共通しています。民主党はこの分野に詳しい専門家がいるのでしょうか。他の分野に比べて、非常に具体的で有効な施策が打ち出されていると感じました。

医師養成数についても、漠然と「増やす」としている自民党に対し、民主党はOECD平均という指標を持ち出し、「1.5倍」という具体的な数値を挙げています。1.5倍というのは、2008年8月、「医療確保ビジョン具体化に関する検討会」において「将来的に確保すべき養成数」として示されていた数値。これが実現すれば、現在の8000人定員が12000人に増えることになります。

民主党が、出産の際の「無過失補償制度」について触れているのも評価できます。この制度は医師側に過失があるとは認められない医療事故において、患者側が訴訟を起こさなくても金銭補償を受けられるというもの。現在は、出産時の医療事故により脳性麻痺となった場合だけが対象です。産科を選ぶ医学生が非常に少なくなっている一因として、産科で医療訴訟が頻発していることが挙げられています。この制度が産科において全面的に導入されれば、患者にとっても医師にとっても非常に安心です。しかし、これも財源をどこから確保するのかという問題がありますが…。

また、民主党は「社会保障費2200億円削減」について「撤回」と明記しています。自民党も現政権においてすでに2200億円削減を凍結していますが、今後も凍結なのか、凍結解除なのか、撤回なのか、マニフェストで触れられていないのは残念です。
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