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都心を襲う「直下地震」の被害想定を知る

喉もと過ぎれば、熱さを忘れる…「苦しいことも過ぎてしまえば忘れてしまう」という例えですが、「地震の教訓」に関しては、そうでは困ります。平穏な時こそ、地震に備える絶好のチャンスなのです。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


7月16日に新潟県中越沖地震が発生、同県柏崎市や長野県飯網町で震度6強を観測し、柏崎刈羽原子力発電所では放射能漏れが発生したのは記憶に新しいところです。しかし、それでも95年1月の阪神淡路大震災と比べれば、被害の程度は少なくて済みました。大都市のようにヒトや建物が密集していなかったことが、被害を拡大させなかった理由の1つと考えられています。

ということは、もし仮に、集積度の高い都心部で大地震が発生したら、その被害はとてつもなく甚大になることが容易に想像されます。日本の首都・東京でマグニチュード7クラスの地震が起きたら、東京だけではなく日本全土が機能を喪失することになるでしょう。

そこで、東京都は災害対策の一層の推進を図り、防災意識の向上に寄与するよう「東京における直下地震の被害想定に関する調査報告書」を作成・公表しました(平成18年5月)。今回は、こうした都心を襲う「直下地震」の被害想定をご紹介したいと思います。

人的被害16万人、建物被害47万棟  東京湾北部地震


まずは、都心直下地震についての被害予想からです。東京都防災会議では東京に大きな被害をもたらす「東京湾北部地震」と「多摩直下地震」の2地震を、発生頻度の高い地震と想定。マグニチュード7.3と同6.9で、それぞれの被害状況をシミュレーションしています。季節や発生時刻なども細分化し、実態に即した予想を立てているのが特徴です。

そして、その中から最も被害規模が大きくなると想定されている条件を取り上げ、阪神淡路大震災と比較したのが下表です。見てお分かりの通り、首都直下地震は阪神淡路大震災を上回る被害が想定されていることが分かります。

東京湾北部地震と阪神淡路大震災の被害の比較
 東京湾北部地震阪神淡路大震災
地震の概要発生年月日冬の夕方(18時)1995年1月17日
震 源東京湾北部淡路島
規 模マグニチュード7.3マグニチュード7.2
風 速毎秒15m-----
震源の深さ約30~50Km16Km
人的被害死者・行方不明者6,413人6,436人
重傷者24,501人10,683人
軽傷者136,359人33,109人
合 計160,860人43,702人
帰宅困難者4,476,259人-----
建物被害全 壊126,523棟104,906棟
半 壊345,654棟144,274棟
一部損壊-----263,702棟
避難者の人数3,990,231人約237,000人
(出所)NPO法人 耐震総合安全機構「生活を守る耐震手引き(東京編)」より転載


どちらもマグニチュードはほぼ同じなのに、人的被害も建物被害も圧倒的に東京湾北部地震のが大きくなっています。それだけ、東京の方が“密集度”が高いということなのでしょう。

また、近年はビルにしろマンションにしろ高層化が進んだため、こうした土地の高度利用化が、かえって負傷者を増加させるとの分析もあります。建物そのものは丈夫でも、特に上層階では「共振」により揺れの周期が増幅。その結果、本来の揺れ以上に揺れることで、ケガ人を出しやすくなるという理屈です。免震あるいは制震装置などの早期導入が不可欠といえるのでしょう。

首都直下地震は今後30年以内に70%程度の確率で発生するとも言われています。それだけに、被害想定の中身を知り、地震に備えることは、“地震大国”日本で暮らす我々にとって、極めて重要な意味を持つことになります。まさに、危機管理能力が問われることになるのです。


続いて、次ページでは関西方面の直下地震想定被害を紹介します。
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