さて今回、問題にしたいのは、なぜ「品格」という単語が今般、話題を集めているのか、ということです。人々の関心が集まるには、それなりの理由があるはずです。個人的には、聞くに耐えない企業の不祥事が後を絶たず、また、「偽」なる単語が2007年を象徴する一文字に選ばれたことと無関係ではないと考えています。つまり、「日本社会が品格を失いつつあることの裏返し」だからと分析します。
品格とは品位や気品のこと。さらに拡大解釈すれば、道徳あるいは倫理観にもつながるでしょう。こうした観念が失われようとしていることへの危機感の表れが、人々の関心となって顕在化したことの証左だと個人的には考えます。
前置きが長くなりましたが、今回はこうした“品格のない”住宅関連企業の愚行(不祥事)をまとめてみました。企業への制裁目的ではなく、われわれ消費者が知識武装するための一助として役立ててもらうことを狙いとします。事実を事実として知ることで、今後の消費行動の参考になることを期待しています。
試験体に細工を加える「悪質」な不正手口 ニチアス
まずは、東証一部上場の大手建材メーカー「ニチアス」から見ていきましょう。同社は「断熱分野のパイオニア」と言われるほど断熱材の歴史がある企業です。ところが、防火用軒裏天井材や間仕切り壁の一部製品を不正に大臣認定取得していたことが07年10月、判明しました。
その偽装手口は、発熱量の少ない塗装を使用したり、水溶液を浸透させて含水率を高めるなど、試験体に細工をするというものでした。さらに、同社は06年10月に問題を把握しながら公表せず、翌年(07年)の10月まで出荷を続けていたそうです。いかに悪質であるかが分かります。その後、「原因究明・再発防止策についての報告書」では自己調査の結果、以下の4項目を発生原因と分析しました。ようやく過ちに気付いた模様です。
<大臣認定 不正受験の発生原因>
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ニチアスが「不正取得した認定の仕様を用いた軒裏が使用されていた建築物」として特定できた物件は8万6405件、そのうち何らかの対応が必要と予想される物件は4万1407件にのぼるとされます(08年1月20日現在)。
そのため、同社はおよそ300億円(損害賠償費用を除く)を費用計上し、改修・補修費用に充てると発表しました。しかし、“失われた信頼”は300億円では回復できないでしょう。企業にも「品格」が問われる所以(ゆえん)が、まさにこうした一例からもうかがい知れます。
次ページでも引き続き、企業の不祥事を追いかけたいと思います。