マンション購入術/マンション購入の失敗・トラブル

第二のヒューザーを生まない法律誕生(1)

来年10月に第二のヒューザーを生み出さないための新法が施行されます。その名も「住宅瑕疵担保履行法」。売り主が倒産しても、買い主は瑕疵担保責任を請求できる消費者保護のための法律です。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


「空気と安全はタダ」は過去のもの(?)
「空気と安全はタダ」……平和な日本に暮らす我々は、誰もが日常生活の安全を疑いませんでした。諸外国に比べ、日本は平和だと……。しかし、こうした我々の感覚は“平和ぼけ”であったと言わざるを得ない事件や事故が多発しています。

スピードオーバーで急カーブを曲がりきれずに脱線、死者107名を出した「公共交通」の安全崩壊(JR福知山線)。期限切れの材料を使って洋菓子を製造・販売してしまう「食品」の安全崩壊(不二家)。さらに、週末の日曜日、歩行者天国を歩いているだけで人命を奪われてしまう「治安」の安全崩壊(秋葉原の連続殺傷事件)など、「病んでいる」としか思えない日本社会の“負”の側面が、至るところで露呈しています。

そして今回、本コラムで取り上げるのが「住」の安全崩壊です。2005年11月に発覚した耐震強度偽装事件によって、住の安全神話は音を立てて崩れ去りました。そのため、“姉歯ショック”を繰り返さないよう、事件から1年7カ月後の2007年6月に建築基準法が改正。構造計算のチェック体制を重層化したり中間検査を義務化するなど、建築確認・検査の厳格化が行われました。再発防止に向けた法的枠組みが整えられることとなったのです。今日、紹介する第二のヒューザーを生まないための法律「住宅瑕疵担保履行法」も、同じ枠組みを形成する法律の1つです。

「法律」と聞くだけで、眉(まゆ)をひそめる人もいるでしょう。しかし、賢いマンション暮らしを実践する上で、欠かすことのできない法律です。今回、シリーズで同法について平易に紹介したいと思います。どうか敬遠せずに、最後までお付き合いください。

姉歯ショックから2年7カ月 主犯格の“今”は?


まずは、耐震偽装事件から2年7カ月、主犯格の面々は“今”どうしているのか見ておきましょう。当該事件に絡む主な裁判結果をまとめたのが下表です。

耐震強度偽装事件に絡む主な裁判結果のまとめ
イーホームズ(廃業)藤田東吾木村建設(破産)木村盛好元一級建築士姉歯秀次-----ヒューザー(破産)

小嶋 進

(2008年6月13日現在)

4人のうち、すでに刑が確定しているのは3人。小嶋進・ヒューザー元社長だけが現在も係争中です。今年3月25日、東京地方裁判所から懲役3年、執行猶予5年(求刑は懲役5年)の判決を言い渡されましたが、一貫として「無罪」を主張する同氏は控訴し、決着は付いていません。これに対して3人はご覧のとおり。2人は執行猶予中、1人は服役中です(08年6月13日現在)。

刑期を終えた姉歯秀次・受刑者は5年後、どのような顔をして我々の前に現れるのでしょうか? それとも、我々の前には二度と現れないのでしょうか?……耐震偽装事件を“風化”させることだけはないよう、心に刻んでおく必要がありそうです。


刑の確定日被告人判決内容訴訟理由
2006年10月18日懲役1年6カ月、執行猶予3年電磁的公正証書原本不実記録・同共用罪(架空増資) 2007年8月10日懲役3年、執行猶予5年詐欺罪、建設業法違反 2008年2月19日懲役5年、罰金180万円建築基準法違反、議院証言法違反(偽証)控訴中詐欺罪
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