あえて「定期借地権マンション」という選択 |
もちろん、こうした傾向は分譲マンション業者も例外ではありません。そこで、筆者も「割安感」+「付加価値」という条件を満たすマンションがあるかどうか考えてみました。
すると、私、ガイドの脳裏をよぎったのが「定期借地権マンション」(以下、定借マンション)という選択肢です。建物は所有権ですので、土地・建物とも所有権の一般分譲マンションとグレードに遜色はなく、それでいて分譲価格は“3割程度”安いというコストパフォーマンスぶりです。借地権契約上、期間が満了すると更新できないため、“期限付き”というネックは存在しますが、とはいえ最低でも50年は住み続けられるわけです。人生80年と考えれば、決して50年という期間は短くないと個人的には思います。そこで、今回は定借マンションの魅力を再考してみることにします。
「所有」と「利用」の“いいとこ取り”が定借住宅の魅力
そもそも、定借マンションが日本に誕生するようになったのは、平成4年に施行された「借地借家法」の中に、「定期借地権」という権利が創設されたことによります。それから17年、国土交通省の「全国定期借地権付き住宅の供給実績調査」(2008年)によると、同法が本格始動した平成5年から同19年までに国内で供給された定借借地権マンションは、一戸建てが3万5492戸、マンションが1万8937戸にのぼります。
ただ、その勢いは決して継続的なものではなく、平成13年の5789戸をピークにきれいな「右肩下がり」の軌跡を描くこととなりました(図1参照)。供給者側にとって定借住宅は、地権者との権利調整が面倒な上、自社の利益が建物部分だけにしか上乗せできないこともあり、完全所有権住宅にくらべて「儲けにくい」という内情があったのです。
折りしも、平成12年には首都圏で販売された新築マンションが9万5000戸超の最高記録に達するなど、分譲マンションの売れ行きが好調さを取り戻したことも、定借住宅“離れ”に拍車をかけることとなりました。
しかし、よく見ると平成19年には供給実績が上向いており、再び、注目を集め出していることも読み取れます。調査元の国交省は、その原因を「都心部での住宅用地難の中、分譲・開発業者が病院や寺院といった地権者へ働きかけ、その掘り起こしが結実した」と分析しています。定借住宅ブーム再燃の予兆を感じさせます。
定借マンションの専有面積は「80平方メートル以上、90平方メートル未満」が全体の25.6%を占めるほどの広さ(ゆとり)です。この広さで完全所有権マンションより3割程度安いわけですから、「割安感」+「付加価値」という条件を求める消費者の心を動かさないはずはないでしょう。
あえて「定期借地権マンション」という選択 ―― 十分、一考に価すると、私、ガイドは考えます。