労務管理/雇用側の労務知識

失業保険を最短で、多くもらえる退職理由は?

次の仕事が決まっていない状態で会社を辞めるとき、一番の不安がお金です。最後の給与が振り込まれた後は、貯金で生活していくしかありません。お金のことが気にかかってしまうと、とにかく急いで仕事を決めたい!早く給与をもらいたい!と条件もよく確認しないままに決定しがちです。そんなときは、失業保険(失業手当)を活用しましょう。退職理由や勤続年数によってもらえる金額、時期が変わる点を解説します。

小西 道代

執筆者:小西 道代

労務管理ガイド

退職時には、「雇用保険の加入」と「失業保険給付の条件」を確認しよう

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失業保険・失業手当はいつからもらえる?

失業すれば、必ず失業保険(失業手当)をもらえるのでしょうか?

失業保険は、雇用保険に加入して雇用保険料を納めていた人だけが、もらうことができます。雇用保険は会社に雇用されると加入しなければならないのが原則ですが、加入しない場合もあります。
・週の勤務時間が20時間未満のとき
・雇用される期間が30日以下のとき
・学生が働くとき(夜間の学校を除く)
雇用保険料は給与から天引きされるため、まずは給与明細で「雇用保険料」の欄を確認しましょう。社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入すると、数万円の保険料が天引きされて手取り額が大きく減ってしまいますが、雇用保険の保険料は数百円~高くても千円程度、月々千円程度の保険料で、失業時に失業手当がもらえるのです。

失業手当をもらえる条件は以下です。
・失業状態にあること
・ハローワークで求職の申し込みをすること
・退職前2年間に、11日以上働いた月が12か月あること
退職して次の会社が決まっていないと「失業状態」ではありますが、ここでは「ハローワークで求職の申し込み」をすることが条件です。つまり、就職しようという積極的な意思があり、本当に仕事を探していること(求職活動)が求められます。

以下の場合は「失業状態」と判断されず、失業手当をもらうことはできません。
・病気やケガ、出産や育児などですぐに働くことができないとき
・定年退職で少しゆっくりしたい、結婚して家事に専念したいというとき

まずハローワークへ!失業保険が振り込まれるのは、早くて1ヶ月後

失業保険をもらうためには、その人が「失業状態」にあることをハローワークが確認しなければなりません。そのため、退職後はまずハローワークへ行って「求職の申し込み」をしたうえで求職活動をスタートします。

求職方法は、ハローワークの求人票だけでなく、一般の求人サイトや友達の紹介でもいいのですが、単に検索するだけではなく、実際に履歴書を送付したり面接に行ったりすることまでが求められます。民間企業が合同説明会や転職フェアへの参加も、求職活動とみなされます。

ハローワークで求職の申し込みをしたときに「失業認定日」が決められます。その日に再度ハローワークへ行き、どのような求職活動をしたかを報告します。しっかり求職活動を行っていることが認められて初めて「失業状態」となり、失業手当をもらえるのです。

「失業状態」の確認は4週間ごとに行われ、最初の失業認定日が4週間後に設定されるため、失業保険が振り込まれるのは早くても1か月後です。

その後も、4週間ごとに「失業認定日」が指定され、前回の認定日から今回の認定日の間が「失業状態」だったと確認できると、4週間分の失業保険が振り込まれる、という流れです。

「給与が低い」と給付率が上がる

失業保険の金額は、退職前6ヶ月間の給与額をもとに計算します。退職時に会社からもらう「離職票」に6ヶ月間の給与額が記載されていますので、正しい金額が書かれているかを確認しましょう(賞与や退職金は含みません)。

この6ヶ月間の給与額の合計を「180」で割ったものを「基本手当日額」と言い、退職時の年齢により上限額が決まっています。さらに、同じ年齢でも「基本手当日額」の金額によって「給付率」が変わります。給付率は50~80%で設定され、給与額が低い人ほど高い割合で計算され、退職前の給与額による不公平感を多少抑える工夫がされています。

「会社都合」で解雇されたとき、「転職しにくい年齢」だと多くもらえる

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自己都合と会社都合の退職理由で失業手当はどう変わる?

退職時に会社からもらう「離職票」には、退職の理由が記載されています。失業保険は、雇用保険加入者の保険料から支払われているため、その支払いや金額には公平性が求められます。

退職理由は、以下のように分かれます。
  • 自分のキャリアアップのために退職した人(自己都合退職
  • 会社の経営状態が悪くなって給与が支払われず退職せざるを得なかった人(会社都合退職
  • 同居する親が病気になって看病するため退職しなければならなかった人(正当な理由ある自己都合退職
特に失業保険が手厚く設定されるのが、「会社都合による退職」です。会社が突然倒産したり、働いていた事業所が閉鎖されたりしたときは、従業員は全く非が無いにも関わらず、退職に追い込まれます。

このような場合は、次の就職先を探す時間もないままに退職せざるを得ないため、転職のしやすさ等を考慮し、勤続年数や年齢に応じた計算式で失業保険の金額が決定します。
<例>
勤続年数6年で28歳:基本手当日額×120日分
勤続年数8年で34歳:基本手当日額×180日分
勤続年数13年で40歳:基本手当日額×240日分
勤続年数25年で56歳:基本手当日額×330日分

「会社の労働基準法違反」で退職するとき、失業保険が多くなる

雇用保険料は、従業員と会社がそれぞれの保険料率に従って支払っていますが、実は、国も一定の保険料を負担しています。国が支出している以上、会社の法律違反が原因で退職せざるを得なくなった従業員に対しては、手厚く保護されています。

例えば…
・入社時に説明された労働条件と採用後の雇用契約の内容が大きく違っていた!
・会社から急に賃金を20%カットする!と言われた
・退職前3ヶ月間、毎月50時間の残業をさせられて体を壊しそうになった!
・1年契約を更新して4年も働いてきたのに、急に次の更新はしないと言われた!
このようなときは、基本手当日額に「会社都合による退職」と同じだけの日数をかけた失業保険をもらうことができます。

「自己都合退職」でも、失業保険を多くもらえることがある

自分のキャリアアップを考えての転職や、今の仕事が嫌になって辞めたときなどは、「自己都合退職」として、失業手当は一番少ない金額となります。しかし、「会社の事情」とも「自己都合」とも言えない以下の理由があって、ハローワークがやむを得ない正当な理由があると認めたときは、もらえる失業保険の金額が多くなることがあります。
・親の死亡により家庭の事情が急変したことにより、退職せざるを得ないとき
・配偶者や扶養する家族と別居生活を続けることが難しくなって、退職せざるを得ないとき
・結婚により引っ越したために通勤が不可能な距離となって、退職せざるを得ないとき
・子供の保育所が近くで確保できず送り迎えが遠くなってしまい、退職せざるを得ないとき
上記の理由が認められるためには、会社の就業規則や証明書類などの提出を指示される場合があり、会社の協力が必要となるかもしれません。また、会社によっては、これらの退職理由を伝えても「自己都合退職」で処理されてしまうことがあります。

「離職票」の「離職理由」欄を自分でもしっかりと確認し、会社に相談しても対応してもらえないときは、ハローワークの窓口で相談してみましょう。

「自己都合退職」だと、失業保険が振り込まれるまでに3ヶ月かかる

失業保険をもらうためには「失業状態」にあることが条件であり、「失業状態」にあることを確認するため、ハローワークは4週間後の日を「失業認定日」に設定します。この間に求職活動をしっかりとしていれば、失業保険が振り込まれるのですが、すぐに振り込まれない場合があります。

「自己都合退職」は、退職の時期を自分で決めたうえで会社へ退職届を提出します。どんな退職理由であっても、次の仕事を探す時間を考えて退職できるため、失業手当を支払う緊急性が低いと判断され、失業保険が振り込まれるまでに「給付制限(3ヶ月)」がかかります。

契約社員の契約終了後や定年後は、給付制限はないが、金額は自己都合退職と同じ

また、3ヶ月や6ヶ月などの期間を決めた雇用契約(有期雇用契約)で働く場合や会社の就業規則で決められた定年まで働く場合などは、雇用契約の終了時期を分かったうえで働いています。つまり、終了時期が近づいたときに転職活動をスタートさせることができる、と考えられます。

この場合、「給付制限(3ヶ月)」はかかりませんが、失業保険の金額は「自己都合退職」と同じ金額となります。
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