マンション不況の再燃を予感させる「穴吹ショック」の波紋 |
同社が傾いた原因について、プレスリリースによると「2007年夏以降のサブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱と、その後の景気後退による不動産市場の悪化」と指摘。さらに、「2008年9月のリーマンショックを契機とした金融収縮と大幅な景気後退」を理由に挙げており、その結果、主力である分譲マンション事業が相当の打撃を受けたと説明しています。
1961年(昭和36年)に法人改組され、1978年(同53年)に自社分譲のサーパスマンションを福岡市に発売以降、今年10月末現在で累計新規供給数が7万4845戸(1294棟)にまで拡大した穴吹工務店。販売戸数が過去最高となった2006年3月期には、年間約1553億円の売り上げを計上するまでに成長しました。ところが、帝国データバンクによると「2009年3月期の年間売上高は約1306億円にまで落ち込み、約127億円の当期純損失を余儀なくされたため、2期連続の最終欠損となった」そうです。
負債総額は約1403億円。「今年5月のジョイント・コーポレーション破綻に次いで5番目の規模。四国地区では過去最大の倒産」(東京商工リサーチ)となってしまいました。たまたま、香川県出身で地元に詳しい知人に話を聞くことができたのですが、「穴吹コンツェルンは地元最大級の財閥で、穴吹工務店はその本丸」とのことでした。名古屋経済がトヨタ自動車の業績不振で大打撃を受けたように、“穴吹ショック”で香川の地元経済が地盤沈下しないか気がかりです。
と同時に、持ち直しつつある分譲マンション市場が腰折れしないかも心配です。そこで、過去これまで、どのような倒産劇(ドミノ倒し)があったのか?― 今回は、これまでの破綻企業を振り返ってみることにしましょう。
「東京建物」が最大約456億円の公募増資を発表する
分譲マンション業者の経営破綻は08年春頃から目立つようになりましたが、その原因は大きく2つありました。1つは、値付けの失敗を主因とした販売不振による収益の低下。そして、もう1つは100年に一度といわれる金融危機により、メーンバンクが融資態度を硬化させたことによる資金調達環境の悪化です。「黒字倒産」なる言葉が新聞紙面に踊ったように、不動産向け融資は厳しさを増しました。そして、運転資金を確保できない分譲マンション業者が“自滅”していったのでした。
帝国データバンクが今年10月に行った企業意識調査によると、2009年末の資金繰りについて、不動産業者の22.8%が「懸念がある」と答えています。業種別では、「懸念がある」と答えた全事業者で第3位(第1位:建設業26.3%、第2位:小売業23.5%)でした。また、懸念する理由については、不動産業者の82.0%が「売上の低迷」と回答しており、次いで、「金融機関の貸し渋り」54.1%、「金融機関の貸しはがし」19.7%と続きます。
11月17日、東京建物が公募増資などで最大約456億円を調達すると発表しました。折りしも、マンション不況の影響で、3000戸を年間供給目標としていた中期経営計画を見直し、今後3年間の供給数を毎年1500~2000戸に抑制する“守り”の経営へと軌道修正した矢先のことです。
3年5カ月ぶりに「デフレ宣言」が出されるなど、日本経済そのものが“またしても”減速し始めています。それだけに、「マンション不況の再燃を予感せずにはいられない」―― こう感じるのは、私、ガイドだけではないでしょう。年末にかけての動きが気になるところです。