米ハーバード大学系の科学誌が、ユーモアと独自性を兼ね備えた研究や開発に毎年与えられる、ノーベル賞のパロディ版「イグノーベル賞 平和賞」受賞や、米TIME誌「2002年最高の発明品」に選ばれた、(株)タカラの犬語翻訳機『バウリンガル』。

バウリンガルとは犬の鳴き声を首輪に装着できる小型ワイヤレスマイクから本体に音声転送し、リアルタイムに泣き声を分析、画面に表示することのできる、「ボイス翻訳」機能を主にした、犬と飼い主との携帯コミュニケーションツールだ。この3月には、発売以来半年で約30万台の売上を達成。おもちゃメーカーの定価14,800円という商品は高額だが、大ヒット商品となった。

このヒットの要因はどんなところにあるのだろうか? バウリンガルのプロジェクトメンバーの一人、五島誠善氏にインタビューを試み、その秘密を探ってみた。

(株)タカラ ライフカルチャーマーケティング部 五島誠善氏(26歳)
常に電卓は持ち歩く。「原価計算などに使うため」との事だが、数字を意識した姿はさすがマーケッターと言える。今回の取材の際にもつい、持ってきてしまったそうだ。
ヒットを生む組織

バウリンガルの開発プロジェクトでは、立ち上げからマーケティング担当者が入り、細かくマーケットや販路を分析し、それに対応する形で技術担当とともに企画案をまとめていったという。

実は、このスタイルがタカラのユニークなところで、技術とマーケティングが二人三脚のように一緒のチームで活動する。ビールサーバー『レッツビアー』や『デジQ-R』『なんちゃってシリーズ』などの大ヒットの裏には、こうしたマーケットに柔軟に対応できる組織形態があった。

インタビューに応じてくれた五島氏は、バウリンガル開発チームリーダー梶田政彦氏の下で、マーケティングを担当した。


「売れる」という答えが先にあった!

一般的に、商品開発にはユーザー情報や市場調査の分析により、新商品の企画が提案されることが多いが、バウリンガルの場合は違った。

開発のきっかけは、日本音響研究所がTBSの番組を通じて行った、声紋鑑定を応用し犬の鳴き声からその気持ちを分析する試みだった。

番組を見ていた携帯電話のコンテンツ企画・開発会社から商品化を打診されたタカラの佐藤慶太社長の、社運を賭ける勢いでの商品化指示により開発はスタートした。

そこには「売れるはずだ! 絶対に売れる!!」という答えが先にあり、開発やマーケティングへは、ヒットを生むためにどういった商品を開発するか、そしてどう売るかが命題であったのだ。これは楽しいプレッシャーだったと、五島氏は当時を振り返った。