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連載 ヒットの秘密(5) バウリンガル大ヒットの立役者(2ページ目)

発売以来半年で30万台の売上を達成した犬語翻訳機の『バウリンガル』。そのヒットの要因はどこにあるのだろう?タカラの開発者へのインタビューによりその秘密を探ってみた。

執筆者:木村 勝己

愛犬家への執拗なリサーチ

プロジェクトの中で犬を飼っているメンバーは一人もおらず、もちろん、過去に発売された商品の中にもペット用品はない。犬に関するデータが全くないところからのスタートだった。とにかく犬を飼っている人たちの話を聞くことから始めないと、前には全く進めない状況だったのだ。

あらゆる統計データを調べ尽くしたことは言うまでもない。公園に行っては、犬を連れた人に声をかけ、ペットショップでは犬ではなく、飼い主の動きなどを見て一日中ねばったことが何度もあった。数千人の愛犬家と直接話し、数字では知りえない生の情報を得たという。

4種のモックアップ
左が一番目の試作機。防水加工や、電波受信の精度を高くするなどの対応により外形は当初より大きくなった。(右が商品化されたもの)
首輪は赤を選ぶ人が一番多いことや、同系色の黄色を選ぶ人が次に多いことがわかった。また大型犬、中型犬や小型犬と分けると、それぞれにかける総費用は変わらないが、大型犬では餌代の割合が多く、小型犬では餌代が少ない分、美容院や小物にお金を掛けることがわかった。

さらに愛犬家は「ウチの子」、「よそのワンちゃん」と言い、飼い主同士を呼び合う場合は「○○ちゃんのお母さん」と言う。「このワンちゃんは雑種ですか?」と質問すると、「いいえ、ウチの子はミックス犬です!」と指摘されたこともあったそうだ。

完成した商品を見るとわかるが、「雑種」という表現はどこにもなく「ミックス犬」と表現されている。五島氏が得た生の声は確実に迅速に商品にフィードバックされている。

おもちゃ会社ゆえの苦労
開発リーダーの梶田氏と部下の五島氏
「散らかっていますから・・・」と言いながらも職場での写真を許してくれた。梶田氏は『なんちゃってシリーズ』でヒットを連発!
声紋鑑定を応用したハイテク商品であるにもかかわらず、タカラというとおもちゃメーカーのイメージが強く、お客に誤解を与えることが多かったようである。

『なんちゃってシリーズ』のヒットが災いしてか、愛犬家の中では「本当に使えるの?」「本当に犬語がわかるの?」「これはジョーク?」という意見が大半だった。五島氏はこのイメージを払拭するために、技術的な裏づけを前面に出した広報戦略をたて、販売時にも“おもちゃ”という言葉を一切使わないなど周到な準備をすすめた。

それでも、商品の完成が発売日ギリギリであったため、プロモーションは試作品で進める必要があり、デモの時に電波が飛ばなかったり、誤作動が起こったりと広報活動の苦労も大きかったという。
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