もっと広いトイレの空間を!これは多くの人の願いである。だがこれには給水タンクの大きさが問題になっていたのである。
1960年代のトイレタンクはハイタンク式といわれ、天井に取り付けられた形であった。それからロータンク式となり背面の壁の角に取り付けられた。1970年代からは密結タンク式といわれ、便器とタンクがくっついたものである。
タンクレストイレ「satis」 |
「フルオート便座」「ほのかライト」「除菌イオン機能」など快適機能搭載(写真提供:株式会社 INAX) |
この両方についてタンクをなくすことで解決したのが、タンクレストイレである。そこには給水口からの経路を二つに分け、洗浄の流れと汚物排出の流れに新しい経路を設けるという新発想である。
INAXは2経路新型バルブの開発により、便器の内側に洗浄の水を流しながら、汚物排出の経路に水を送ることで、相反する課題を解決したのである。配管の水圧だけで洗浄でき貯水が必要ないため、連続洗浄も可能という副次的効果も得られている。
この開発により商品『Satis』は便器の全長を140mm 短くすることができ、動作空間を35 %広げることができた。
INAXは新型バルブを含めた便器全体の小型化で世界最小を達成、この商品でヒットを飛ばし2003年1月に累計販売台数10万台を達成している。
押してもだめなら引いてみな!
商品の小型化や軽量化といった課題のように、従来の延長で突き詰めて考えていくと、それには物理的限界に突き当たる。そのままでは大きなブレークスルーは出てこないのだ。
そこには「コロンブスの卵」的な新しい発想が必要となる。既成概念の枠を取り払い柔軟に多角的に考える、水平思考的な発想が必要だ。
カップヌードルの開発裏話にも良い例がある。開発が進み生産ラインに乗せるときの話である。
ベルトコンベアーに乗って流れてくるカップに、上部から加工された麺を落として入れていくのであるが、麺が斜めに入ってしまい、その後の工程で具が入れられない。
担当者が麺の落とし方を工夫して悩んでいた時に社長が一言、「麺をベルトコンベアーで流してカップを上から被せれば良い」と。
これぞ水平思考である。このようなひらめきや新発想が課題を解決して、時として大きなヒット商品を生み出している。