すごいスピードで広まったカーナビも、開発者のふとした思いから生まれた。写真は7型ワイドTVモニタ搭載で、DVDビデオ再生可能なサイバーナビ。(写真提供:パイオニア株式会社) |
「方向音痴が原因で道によく迷ってしまう……ドライブ中の車内の険悪なムードを打破し、「家族で楽しくドライブをしたい!」という思いがカーナビを開発したきっかけだ」とパイオニアの畑野一良氏は語っている。
が、しかし「畑野氏が方向音痴ではなかったら?」「道に迷っても車内が険悪なムードにならなかったら?」と考えると、カーナビの開発はもう少し遅くなっていたかも知れない。そう考えると、カーナビも「偶然」が生んだヒット商品の一つだと言えるだろう。
「偶然」だけでは商品化は不可能!
偶然な出来事が開発のキッカケになったとはいえ、商品化への道のりは平坦なもの続きではない。
先に紹介した花王の『クイックルワイパー』は開発をスタートさせてから商品化まで、実に6年もかかっている。それは社内の「そんな需要はあるのか?」という懐疑的な意見やモップ用品などを手がけた実績がなく、それに対するためらいなどが障壁になっていた。
『写メール』も当時、軽量化で競い合っていた携帯電話業界にカメラを内臓することによって重たくなることで時代の流れに逆行してしまうことになり、またコストアップにもつながるということで社内の様々なプレッシャーは大きかった。
そしてNHK『プロジェクトX』でも取り上げられた、パイオニアのカーナビ開発エピソードは非常に有名だ。当時のGPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信機は非常に高価で、1日4時間しか利用できないという制限つき。おまけに真夏の車内気温なども開発の厚い壁になった。
"成功の秘訣は1%のひらめきと99%の努力"……かの発明王、トーマス・エジソンの有名な言葉だ。開発のきっかけは偶然だが、偶然がゆえに商品化に立ちはだかる技術的な課題や周囲の反対意見などの障壁は厚い。それでも開発者たちは、努力や苦労を重ねヒット商品を生み出しているのだ。それらの困難に立ち向かう開発者のパワーの源は、商品に対する強い「こだわり」や「想い」にあるのではないだろうか?