休眠特許を、新商品開発や新事業に活用しようという動きが、中小企業やベンチャー起業を中心に生まれてきている。主なターゲットは工業技術院など国の機関が保有する特許や、大企業が未利用で保有している特許である。
現在国内で保有されている有効特許は100万件であるが、実際に活用されていない未使用特許である休眠特許は、約65%の65万件と膨大な数にのぼっている。これらの中には、中小企業やベンチャーにとってはお宝なものも沢山あり、その膨大な休眠特許のデーターベースを作成して、また特許流通アドバイザー等を配置して、特許仲介団体の設立や、インターネットでの仲介ビジネスも生まれてきている。
これらは単に休眠特許の仲介だけでなく、商品開発がスムーズにできるよう、技術支援や、特許所有者からの支援サポートを取り付けたりしており、利用者の立場にたったトータルでのサービスがうまく考えられている。
特許の権利維持には毎年一定の金額が必要である。特許1件あたりの維持費は、請求項の数にもよるが、毎年2万円前後である。そしてこれが特許庁の規定により、3年ごとに約2倍に跳ね上がっていく。数万件の特許を保有すると、年間数億円の維持費が休眠特許のために支払われることとなる。これはすごい出費だ。
このような出費をして登録したにもかかわらず、休眠特許はなぜ生まれるのだろう? 通産省の外郭団体である日本テクノマートは、特許庁の委託を受けて『未利用特許情報実態調査』を実施した。不実施の主な理由は、その上位から以下の内容がある。
1. 他の代替案と比較して効果が少ない。
2. 商品化による利益が少ない。
3. 防衛特許として出願(他社に権利を取られると問題である)。
4. 新技術が後から開発された。
5. 情勢が変化した(業績、経営方針、市場など)。
6. 実施に必要な周辺技術の開発が困難。
以上から判断すると、他社から先に特許出願されることを防ぐ為の出願や、クロスライセンス交渉の為の持ち駒を増やす意味から特許出願をする傾向が大きいようである。しかしこの中には、契約することにより他社が実施することに応じられる(実施許諾)特許が多い。また、大企業の事業規模では利益が望めないものでも、中小企業では利益の出る特許も多い為、休眠特許の利用価値が出てくるわけである。
たとえば、休眠特許活用の成功事例に、ドライフラワーの製造法に関するものがある。容器内に収納した生花を減圧と加熱処理して、水分を短時間に除去し、生花の褐色化を防止するものである。これは日立製作所の特許であるが、事業分野が異なるため休眠状態であった。この情報を有限会社 詩仙堂が特許商談会で見つけ、実施契約により商品化したのである。
このようなことから、産業の発展のためにも、冒頭に紹介したような仲介ビジネスが重要になってきている。特許庁も知的所有権センターを全国に設けてサポートを推進しており、民間の特許仲介サービスも行われている。また、各企業でも自社の休眠特許を積極的に活用しようと、有償公開を始めた。ここから新しい商品やサービスがどんどん生まれることを願いたい。
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