感動する環境づくりとは?
スピーチのシーンはビジネスの現場よりも、感動させるハードルが高いと言いました。それはなぜでしょうか? 聞き手が「感動の話をしてくれるかな?」というつもりで聴くからですよね。だから、ビジネス上で感動話をしようと思ったら、それをスピーチっぽくやらないほうがいい。スピーチっぽく演説を始めた瞬間に、聞き手は「あぁ、今から私のことを感動させようとしている」と感じ、ハードルが高まってしまうのです。
あくまでさりげなく話す。たとえば世間話に織り交ぜていくように。それが聞き手の期待をあげないポイントです。ある人が面白いことを言っていました。「本当に伝えたい内容は、スピーカーでがなりたてるよりも、小声でささやくようにする」と。それに似ている概念かもしれません。
感動しやすいネタつくりの前提
聞き手のハードルをあげずに、感動しやすい環境をつくったら、感動のネタを伝えるタイミングですね。では感動のネタとは?ここで制約がひとつ出てきます。当然のことですが、ネタはあなたのビジネスに関係するものである必要があるということです。泣けるからといって、どこかのケータイ小説の中身を話しても仕方ないですよね。
その会話がビジネスに直結しないということはもちろん、その話を聞いているときに聞き手が「この人は、どうしてこの話をしているんだろう?」という気持ちになって、不穏な空気がつくられてしまうから。
じゃあ、ネタはどうするか?
ビジネスに直結するネタで、いかにして感動できるものを持ってくるか? 一番わかりやすいのは「なぜあなたが今の仕事をしているのか?」という理由を「誰かの幸せのため」にからめて話すことだと思います。そこに自分の体験がからめば最高。たとえば「僕がおもちゃメーカーで働いているのは、おもしろくて安いおもちゃを生み出したかったから。僕が子供のころ、うちは貧乏で、しかも1つ上の兄がいたんです。それで兄はいつも家にひとつしかないおもちゃを僕に遊ばせてくれていました。もし、もっと安くてみんなで遊べるおもちゃがたくさんあったら、当時の兄みたいな優しい子もおもちゃで遊べるかなと思って」なんて聞いたら、ちょっと心に響きませんか?
こういう話が心に響くのも、期待が低いからです。9割の人は、仕事をお金のためにやっている。そこに「お金のためではなく、自分のミッションのため」という話を聞くから、期待を上回ってしまうですよね。キーワードは「期待を下げて、それを上回る」です。
あとは、「自分がお客さんのためになれて、嬉しかったエピソード」もよいですね。そのエピソード自体も感動をそそりますし、お客さんのためになりたいと真摯に思っているあなた自身の考え方にも、相手は感動するかもしれません。
あるブライダル・コーディネーターの人は「たまに過去に担当させていただいたお客様から、お礼やその後の新婚生活などについて手紙をいただくことがあるのですが、そういうときが一番うれしいです。いただいた手紙は家で大切に保管して、時々読み返しているんですよ」と言います。私はこの話を聞いた時、「時々読み返している」という情景が浮かんで、ほんのり感動しました。
いかがでしょうか? なにか、聞き手の期待を上回るネタは思いつきそうですか?
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