クレーム対応の電話の仕方
クレーム電話は、できれば取りたくないと思っている方も多いでしょう。クレームの場合、もちろんお客様は大なり小なり「怒り」を抱えているわけですから、対応が悪いと、さらに火に油を注ぐことになりかねません。クレーム電話は、お客様や取引先からかかってくることもあります。苦情に対する対応が悪いと、大切な取引先を失い、会社に甚大な被害を及ぼすことも考えられます。
「自分のせいではないのに、他人の失敗について謝罪するなんて納得いかない!」という人もいると思いますが、お客様にとっては電話に出た相手が誰であれ、その企業・組織の人間であることには変わりはありません。クレームはあなたに向けた個人攻撃ではなく、会社としての対応が求められています。きちんと対応できるように、クレーム対応の基本から見てみましょう。
<目次>
クレーム対応の電話の仕方1:基本編
■話の内容をきちんと聞くお客様に「誠意」が伝わるように、きちんと話を聞きます。
「おっしゃる通りです」
「お気持ちわかります」
などの言葉を使い、共感しながら話を聞くことが大切です。お客様に「受け入れられた」と感じていただくことが大切です。そして、この人はわかってくれるという安心感を与えるようにしましょう。しっかり耳を傾けながらも、メモを取り、内容をきちんと把握するようにします。お客様が何に対して怒っているのかを知ることが大事です。それをちゃんと把握できなければ、正しい対処はできません。
■お詫びする
こちらに非があるかどうかわからないうちは、「謝罪してはいけない」という欧米流の考え方もありますが、不快な気持ちにさせてしまったことは事実。そのことに関しては、以下のようなお詫びを言いましょう。
「○○様をご不快なお気持ちにさせてしまい、申し訳ございませんでした」
「ご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした」
「説明がいたらず、申し訳ございません」
「せっかくのご信頼にお応えすることができず、申し訳ございませんでした」
ただし、「全て当社の責任です」「責任を持って対応させていただきます」など、クレームの内容をきちんと把握しないままに、全面謝罪はしないようにします。無責任な発言によって、後からもっと大きなトラブルになる可能性もありますから、注意してください。あくまでも、不快な気持ちにさせてしまったことへの謝罪に留めます。
お客様の怒りは、どこに向いているのか、何を求めているのか(謝罪、商品の交換・返品、修理、治療費にかかる支払いなど)を察することが大事です。そして、迅速に対処するべく行動を起こすわけですが、その前に自分が処理できる問題なのか、他の担当者に代わってもらうべきかを正しく判断しましょう。
■気遣いある言葉をかける
商品を購入された方が、「○○を買ったんだけど」とおっしゃったら、すぐに
「ありがとうございます」
と感謝の気持ちを伝えます。怪我をされたお客様の場合は、まず
「お怪我の具合は、いかがですか?」
などお客様を気遣う言葉をかけるようにします。
■お互いにクールダウンする
対応に時間がかかりそうな場合は、
「少々、お時間をいただけますでしょうか」
といって一度電話を切り、クレームの内容を整理し、解決策・対応策を考えるのも一案です。一旦電話を切る旨を伝える際、必ず「いつ頃、電話をするか」も伝えるようにします。ちゃんと対応する姿勢を見せることで、お客様の気持ちはすっきりします。折り返しの電話をするのが遅すぎて新たな怒りを生む危険性があるので、解決策を考えるのに十分かつ対応として遅すぎないタイミングで必ず折り返すようにしましょう。
■クレーム電話の上手な切り方
何らかの解決法・対処法を提示した後は、
「御指摘をいただき、ありがとうございました」
「ご連絡をいただき、ありがとうございました」
とお礼の気持ちを伝えます。そして、
「今後、このようなことのないように十分注意いたします」
と誠実さを伝えます。通常のクレームなら、ここまでに紹介した「基本」で対応できるはずです。
クレーム対応の電話の仕方2:担当者が不在の場合
担当者が不在だった場合はどうすればいいでしょうか。「私、○○が責任を持って、お話をうかがいます」
など、自分は責任者でも担当者でもないけれど、
「この件は、責任を持って担当者に伝えます」
と言うだけで、お客様に安心感を与えられます。
「ただ今、あいにく担当者が外出しておりますので、大至急連絡を取り、折り返しお客様へご連絡をさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?」
お客様の意向を聞いた上で、即座に担当者に連絡を入れます。お客様がいきなり話しはじめたらいったん話を聞き、聞き終わってから
「責任を持って、担当者に伝えます」
と伝えます。担当者でないとわからない点は
「それ以上のことは、私ではわかりかねますので、○○から返事をいたします」
と、次のアクションを伝えことが大事です。クレーム内容は担当者に正確に伝えましょう。自分の感想などを交えず、言ったままを伝えることが大切です。後で担当者がもう一度同じことを聞いてしまうと、「前に言っただろう」「また同じことを話させるのか」と怒りも倍増します。担当者ではなく「責任者出せ!」という2次クレーム発生の元になります。
クレーム対応の電話の仕方3:クレーム対応電話のNG例
■電話をたらいまわしにしない「○○の部署に代わります」「担当者に代わります」など、たらいまわしにしたり、対応する人が何人も変わると、不愉快レベルは一気に急上昇します。
■反論、言い訳をしない
一方的に話をされると、思わず言い訳をしたくなりますが、こちらが言い訳から話を始めては逆効果。まずは、内容の聞き取りに集中し、言い訳や反論はしないようにします。そして、こちらに全く非がない場合には、相手が完全に話し終えてから事情の説明を行います。
「そう、おっしゃられても……」「その者も急いでいたんだと思います」など身内をかばうような言葉は、新たな怒りに火をつける可能性があります。きちんと対応すれば、10分ほどで済むかもしれないことが、延々1時間以上の電話になる可能性もありますし、また、口頭での謝罪で済むはずだったことが、上司と一緒に直接訪問して謝罪しなくてはならない状況にもなりかねません。
気持ちを込めるという意味で、たとえ他の仕事中であっても、手をとめて全身全霊で対応するように心がけましょう。何かの作業をしながら、片手間に対応するのは、もってのほかです。
■勝手にお客様の怒りの度合いを判断しない
怒りを静かに表す方、激しい言葉や態度で表す方など、お客様の性格や状況によってそのクレームの仕方はそれぞれです。「怒鳴ったりしていないから、そんなに怒っていないのだろう」「そんなに大した問題ではないのであろう」、「怒鳴るなんて騒ぎすぎ」などという判断は、決してしないでください。お客様の話の内容をしっかり聞いて、事実の確認、状況の把握をするように努めてください。
■曖昧なことを言ったり、ごまかしたりしない
クレームの内容や会社の方針が、わからないのであれば、適当に判断してはいけません。なぜなら「出来もしないことを出来ると言ったのか!」とあなたの勝手な判断によって、さらに大きなクレームに発展する可能性もあるからです。
■待たせない
電話をかける前から不快な気持ちでいるわけですから、さらに保留などで待たされることによってさらに印象は悪くなり、解決するものも解決しなくなります。事実関係の把握や確認に時間がかかるようであれば、理由を説明し、放置しないようにします。電話を保留にしたまま長い時間待たせることはもちろん、折り返して電話をかけるときも30分以内にはかけ直すようにします。
■お客様を怒らせてしまう、言ってはいけないNGワード
- いいえ、違います
- そんな、はずはありません
- そうは、おっしゃいますが
- わかりません
- それは、できません
どうする?こんなとき
■お客様の勘違いだったとき
クレームの内容を聞くうちに、実はお客様の勘違いだったことがわかるケースもあります。そんなときは「なんだ、あなたの間違いじゃない」というような態度は厳禁です。勘違いは誰にでもあります。あくまでも、お客様の自尊心を傷付けないように「誤解であることがわかって、安心致しました」という態度で接するようにします。
■お客様の怒りのレベルがマックス
先ほど、勝手にお客様の怒りの度合いを判断しないと述べましたが、それでも時には、むちゃなことをおっしゃる方、いきなり怒鳴って電話をしてこられる方もいます。矛盾した話をする方もいるでしょう。そんなお客様であれば、あるほど電話を受けた側は「冷静」でいるように心がけましょう。怒りをとにかく吐き出して、おっしゃりたいことをおっしゃってしまえば、お客様の気持ちはずいぶん楽になります。
相手が感情的にまくしたてているときにこちらが反論して言い負かしてしまうと「もう、いいっ!」と電話を切られてしまいかねません。それでは、お詫びの気持ちが伝わるどころか、今後利用したり、商品を購入していただくことは二度とできなくなります。とにかく「聞く」ことに徹します。そして、お客様の怒りが静まってきたところで丁寧に事情を説明したり、事実の確認をするようにします。
一生懸命耳を傾けても一向に怒りが収まらない場合も、もちろんあります。基本的には担当者、電話を受けたものが責任を持って対応しますが、どうにもならない状態の場合は、上司に出てもらいましょう。
■どんなクレームにも、誠心誠意対応する
電話でのクレームの場合、お客様の表情は見えませんが、声のトーンや話し方からお客様がどれだけお怒りか、または残念に思っていらっしゃるかが伝わってきます。逆に、こちらの気持ちも電話を通して、伝わっているということになります。
言葉だけの謝罪だけではなく、心からお詫びをする気持ちがあれば、自然と受話器を持ったまま頭が下がっていることでしょう。謝罪の言葉を何度も何度も述べているのに、お客様の気持ちがおさまらないというとき、本当に自分が心から「申し訳ない」という気持ちで接しているか、考えてみてください。
「私は担当者じゃない」「私は本当は悪くない」という気持ちが少しでもあれば、あなたの言葉や話し方や態度に出ているはずです。実際には、見えなくてもあなたの態度は、相手に伝わっていますよ。クレームの対応がきちんとしていれば、逆に会社に対する印象が良くなることもあります。「もう一度使ってみよう」「もう一度利用してみよう」と思っていただけたら、あなたのクレーム対応は◎です。
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