人生の悩みについて深く考え、ついには悟りを開いたと伝えられるお釈迦さま。実はその考え方はコーチングに共通するものがあります。お釈迦さまとコーチングの共通点・違いを参考に、新たな人とのかかわり方を見つけてください。
《CONTENTS》●会社を辞めるか? 辞めざるべきか?(1P目)●悩み自体ではなく、悩んでいる人間の心に取り組む(1P目)●コーチングも、悩みに直接かかわらず、「人」に踏み込む(2P目)●「星」か「空」か? コーチングとお釈迦さまの違い(2P目)
会社を辞めるか? 辞めざるべきか?
会社を辞める相談を受けたら、あなたならどうしますか? |
もし、友人から「会社を辞めたい」と相談を受けた場合、あなたならどうかかわりますか? 以下の3つのかかわり方のうち、あなたのかかわり方に最も近いものはどれでしょう?
1)「会社を辞める」ことのデメリットを伝え、辞めないように説得する
2)「辞めてどんな会社に勤めたいのか?」を聴き、転職先に関する自分の情報やアドバイスを伝えて「会社を辞める」ことをサポートする
3)「なぜ会社を辞めたいのか?」を聴き、その理由・状況に応じて友人が会社を辞めるべきか、辞めないべきかについてアドバイスする
さていかがでしょう? 多くの人は3)を選んだのではないでしょうか。 1)や2)のように、いきなり、会社を辞める、辞めないの議論をするのではなく、まずは、相手が辞めたい理由を確認して、それを踏まえて辞めるか辞めないのかのアドバイスをするのが通常でしょう。
ところで、いきなりですが、もしお釈迦さまならどうかかわると思いますか? やはり、3)でしょうか? それとも全く違ったかかわり方でしょうか?
悩み自体ではなく、悩んでいる人間の心に取り組む
お釈迦さまなら、1)や2)はもちろん、3)のようなかかわり方もしないでしょう。なぜなら、3)のかかわり方も1)や2)と同様、「会社を辞めるか・辞めざるべきか」を取り組むべき問題としてとらえているからです。「とはいっても、ここでの問題は、会社を辞めるか・辞めざるべきかでしょう」と、あなたは反論するかもしれません。確かに直面している問題は「会社を辞めるか・辞めざるべきか」です。しかし、直面している問題だからこそ、お釈迦さまはその問題に直接取り組まないのです。
ロボットの研究者でありつつ、「私」という哲学的テーマに取り組んでいる前野隆司・慶応大学理工学部教授は、その著書『脳の中の「私」はなぜ見つからないのか?――ロボティクス研究者が見た脳と心の思想史』(技術評論社)で、お釈迦さまが体験した「悟り」をこう表現しています。
「ある問題をその上のレベルからとらえて、問題の問われた意味を理解すること」
「与えられた「問題」を解くのではなく、その問題はなぜ何のために発せられたのか、という「メタ問題」を解くのである」
冒頭の例で言えば、「会社を辞める」かどうかを考えるのではなく、「会社を辞めたいと思う心」を考えるのです。
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