コーチング/コーチング基本知識

コーチングの基本を知ろう! 4 相手を映し出す「鏡」になろう(2ページ目)

「コーチングの基本を知ろう!」シリーズの4回目は「鏡になる」をキーワードに、コーチとしての基本のあり方・スキルを紹介します。あなたが「鏡」になって相手を映し出すだけで、相手は勝手に気づき始めます。

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

相手の言葉も鏡に映していく

言葉、気持ちも映し出しましょう!
鏡に映すのは姿勢や動作だけではありません。同じように言葉も鏡のように映して返していきます。これも知っている方がいるでしょう。“オウム返し”“バックトラッキング”などと呼ばれたりします。相手が使っているキーワードを伝え返したり、話の最後の部分をもう一度繰り返したりします。例を挙げると次のようになります。

相手:「最近、やる気を失っているんですよ」
あなた:「やる気を失っているんだ」

相手:「とにかく思い切りやりたいんです」
あなた:「思い切りだね」

人によっては、「相手の言葉を繰り返すのなんて、わざとらしい」「相手は気持ち悪がるのでは?」などと心配されたりしますが、ぜひ試してみてください。これも密かにやる必要はありません。ただ言葉を返すだけで、相手は「そうなんですよ」「そうそう、○○なんです」と自分の状態を確認し、自然とさらに深い部分を話し始めていきます。

なんとなく感じたことを返すだけで……

見える動作・姿勢、聞こえる言葉を返すことができたら、今度は感じる気持ち・エネルギーを返すことにも挑戦してみましょう。人の話を聴いていて、なんとなくその人の気持ちが伝わってきたり、気持ちの変化に気づいたりしませんか? それを感じたまま伝え返していくのです。

感じたことが正しいと証明する論理的根拠はないでしょう。でも、人は無意識のうちに顔の表情や声のトーンをはじめ、微妙な変化をとらえています。もちろん、当たっているかどうかはわかりませんが、とりあえず伝え返してみましょう。大事なのは、解釈せずにそのまま伝えること。そして、自分が感じたことにこだわらないことです。相手が「そんなことはないけど……」といったら、「じゃあ、どんな感じなの?」と質問していけばいいだけです。

あなた:「それを実行することには確信を持っているようだね」
相手:「そうですね。確かにそれは決めています。」

あなた:「何かに引っかかっているような感じがするんだけど」
あなた:「そうなんですよ。実は……。」

感じた気持ちやエネルギーを伝え返されることは、動作や言葉よりもより心の深い部分に触れるので、相手にとても大きなインパクトがあります。ついつい、相手の言葉や動作に気を取られがちになりますが、相手から伝わっていく気持ちやエネルギーも感じて、伝え返してみてください。

「コーチとはクライアントの鏡になること」

いかがでしたか? 上司はついつい「何かいいこと言わなきゃ」とか「厳しく言っておかないと」なんて思いますが、あなたが部下の様子をただ映し出す鏡になることがまず必要なのです。あなたの鏡の曇りをできるだけとって、透明な状態で部下と向き合ってみましょう。そして、目に見える姿勢・動作、耳に聞こえる言葉、さらには身体で感じる気持ちやエネルギーを映し出してみてください
それだけで、部下は自分で勝手に気づいて変わり始めます。

【関連サイト】
■「コーチングの基本を知ろう!1――教えるコーチ・教えないコーチ」
■「コーチングの基本を知ろう!2――コーチはタクシーの運転手です」
■「コーチングの基本を知ろう! 3――「質問」のパワーを活用する」
■「コーチングの基礎を学ぶ1:聴く・傾聴」
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