コーチング/信頼関係作り

部下を“モノ”扱いする本は避けましょう! コーチング本を選ぶ3つの視点(3ページ目)

「コーチングについて勉強するぞ!」と、コーチング本を本屋に探しに行ってみたあなた。あまりの種類の多さに迷っていませんか? あなたがコーチング本を選ぶときに、知っておいてほしいポイントをご紹介します。

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

視点2:部下を“モノ”ではなく“ヒト”として扱っているか?

目に見えるテクニックや質問集だけでは十分でないとすれば、さらに何が大事なのでしょう? それは、コーチングの対象となる相手、上司がコーチであるとすると部下をどう見ているか? その見方です。

●自分の思い通りになる“モノ”としてみているか?

●自分の思い通りにならない“ヒト”としてみているか?


従来の指示・命令型のマネジメントでは、部下は上司が自由に使える“駒”、すなわち自分の思い通りになる“モノ”として扱われてきました。しかし、だんだんと指示・命令では部下は思うように動く時代ではなくなってきました。そこで、新しいマネジメント、コミュニケーション手法として、コーチングが注目されているのでしょう。しかし、そのときにコーチングの捉え方として、二つの方向に分かれます。

一つは、これまでどおり、部下を自分の思い通りになる“モノ”ととらえ、指示・命令に変わる操作技術として、コーチングをとらえる方向です。質問をしたり、話を聞くふりをしたりしながら、部下を上司が思う方向に持っていこうとする。誘導技術としてのコーチングです。

もう一つは、部下を“モノ”ではなく、自分の思い通りにならない“ヒト”としてとらえる方向です。部下を上司の思い通りに操作することを手放し、一つの独立した人格として認め、自ら考え、意思決定し、行動する存在としてかかわっていく。サポート技術としてのコーチングです。

パターン化、わかりやすさを求めるワナ

実は、世間のコーチング本の多くが伝えているのは、誘導技術としてのコーチングです。部下のタイプ別対応方法や、状況に応じた質問をまとめ、「こうすれば部下はこうなる・こう動く」として、部下を一つの“モノ”としてとらえたものがかなりあります。そのとおりになる場合もありますが、相手が生きている“ヒト”である以上、思い通りにはいきません。

そして、あなたが部下の立場になってみてください。“モノ”として扱われるのか? “ヒト”として扱われるのか? どちらがいいですか? 

実はコーチングの本質はここにあると私は考えています。相手、つまり部下を独立し、自立した“ヒト”として扱うことがコーチングの大前提なのです。部下を“モノ”として思い通りに扱おうとする誘導型のコーチングは、私の考えるコーチングとはズレています。

ただ、多くの本の著者の名誉のために言っておくと、著者の意図としては、部下を誘導する技術として書かれたわけではないと思います。相手をサポートしようという意図のもとでのかかわりのなかで、自分がやってみてうまくいったパターンをまとめられたものがほとんどでしょう。しかし、パターンとしてまとめようとすると、どうしても、「こうすれば部下はこうなる・こう動く」というカタチになってしまいます。このサイトの記事を書いている私にしても、そのワナに陥ってしまいがちです。

また、読者もそういうわかりやすいものを求めます。部下という“ヒト”に対しても、「こうすればこうなる」と予測可能な方法を求めがちです。あなた自身、もしそういった方法があればうれしいでしょう。その中で、ついつい部下を“ヒト”ではなく、“モノ”扱いしてしまう傾向が出てくるのは仕方ないかもしれません。ただ、著者の意図はどうであれ、読者が部下を自分の思い通りになる“モノ”だと勘違いしそうな本は外しました

視点3の解説 次ページへ>>
 
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます