キャリアプラン/キャリアプラン事例

「ビル再生王」不遇の時代 堀口智顕氏後編(6ページ目)

ビル再生のリーディングカンパニー、サンフロンティア不動産堀口智顕氏の後編。バブル崩壊直前に独立した堀口氏は、厳しい市場環境の中で苦戦を強いられる―――。

執筆者:角田 正隆

ノルマのない不動産会社

リプランニングの一例

サンフロンティア不動産には、不動産業界に多い営業ノルマやインセンティブがない。

「自分自身嫌だったんです。何事もお金で換算されると、人の心は荒廃し、個人主義の幅を利かせてしまう」

という考えからだが、これは同社社員も私利私欲のために、業績を上げているわけではないことを意味する。堀口氏が人材育成に取り組み、全社員に「利他の心」を浸透させたことが背景にある。

思えば中古ビルを再生する「リプランニング事業」との出会いも、堀口氏の考えの変化によるところが大きかったといえる。中古ビルの再生を最初に手掛けたのは、ビルの売買を仲介した際、その案件が買い手の都合で成立しなかったため、やむなく堀口氏がそのビルを買い取り、老朽化したビルを再生して売却したことが出発点。目先の私利私欲だけで動いていたら、とても多額の借金をしてビルを買い取ることはなかっただろう。困っている売り手のために「利他の心」を発揮したからにほかならない。


夢は「日本一役に立つ不動産会社」


1度その夢を果たせず会社を辞める原因になった「株式上場」を、会社設立からわずか5年で達成させ「東京で一旗上げる」という夢を実現した堀口氏の挑戦はまだ終わらない。堀口氏の夢は「日本一役に立つ不動産会社」になること。規模的にも国内トップクラスを狙う。この飽くなき向上心の背景には、次のような考え方がある。堀口氏はよく「富士山と高尾山への登山」にたとえながら語っている。

標高も低く登山ルートも整備された「高尾山」への登山にさしたる準備も必要ない。ところが日本一の高さを誇る「富士山」に登るには、相当の準備が必要になってくる。日ごろから十分なトレーニングを積み、当日のコンディションにも入念な配慮が欠かせない。

これは個人のキャリアについても同様にいえること。目標が低ければ努力する必要などないが、目標が高ければスキルアップにも意欲的になれる。

「そもそも私には何もなかったし、3流大学も中退しています。失うもの、守るべきものがなかったから、一生懸命働くしかなかった。でもそれは楽ですよ。悩むことなく、前へ前へと踏み出すだけですから」「ビジネスパーソンには、夢と志を持ってほしいですね。人間の能力は無限です」


関連リンク
前編「ビル再生王」サンフロンティア堀口社長
ビジネスパーソン半生記 サンフロンティア不動産 堀口 智顕氏
サンフロンティア不動産

<前編インデックス>
1.中小ビルの街、東京
2.命がけのモズク採り
3.ものづくりへの情熱
4.アルバイトからカフェの店長へ
5.27歳の転機
6.未経験職種への転職活動
7.取締役への抜擢
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