命がけのモズク採り
▲磯のサザエを採りですら命がけだった。日本海の大波が押し寄せて、磯に叩きつけられたことも一度ではない |
だが意外にも堀口氏が不動産業界に入ったのは遅く、27歳のときだった。18歳で大学受験のために上京し、そのままカフェのアルバイトにのめり込み、調理師資格を取得した。上場不動産会社のトップとしては異色の経歴というほかない。リプランニング事業の原点は、それ以前の幼少時代にあったのかもしれない。
堀口氏は1958年、新潟・佐渡島で生まれた。佐渡は特に冬の気候が厳しい土地として知られ、住民は毎年大雪に悩まされ、吹き荒れる吹雪で歩行もままならない。周囲を日本海で囲まれ、その荒波で本土との交通すら妨げられる。そうした環境で育てば当然、自然に対する畏敬の念も深くなるに違いない。
高校時代には夏になると、貧しい生活の足しにするため、海でモズク採りをしたという。モズクは潮流の早い場所で育つため、網を片手に水深8メートルも素潜りした。しかし再び水面に出ると、船が50メートル以上も流されてしまうことがあった。船に泳ぎ着こうとしても潮流に妨げられまっすぐ泳げない。潮の流れを巧みに読んで、斜めに泳ぎ切るしかなかった。
「何とか生き延びたという感じですね。自分の子供がやりたいといっても絶対にやらせません(笑)」
命がけで自然と向き合った体験は、「エコ企業」を掲げる今と無縁ではないはずだ。