不動産の物件情報は近年、インターネット経由のものがかなり多くなっていますが、それ以外にも住宅情報誌、新聞紙面、新聞折込チラシなど、さまざまな媒体によって消費者へ情報が提供されています。
改めていうまでもなくこれらはすべて広告であり、インターネットの物件検索サイトで表示される「該当物件一覧」も広告であることに違いはありません。
それでは、この不動産広告をみるときに注意しなければならないこととは何でしょうか。これから8回に分けて、不動産広告に関する法律の規定や公正競争規約、項目ごとのチェックポイントなどを説明していくことにしましょう。
1回目の今回は、宅地建物取引業法による規定です。
誇大広告などの禁止
宅地建物取引業法第32条には次のように規定されています。「宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地または建物の所在、規模、形質、もしくは現在や将来の利用の制限、環境、交通その他の利便などについて著しく事実に相違する表示をし、または実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない」(一部、省略や表現の変更をしています)
この条文における「著しく」というのはたいへん曖昧で、はっきりとした線引きや基準はないのですが、一般的には「広告として社会通念上許容される程度の誇張、誇大の限度を超えるもの」となっています。
また、表示することによって誤認などをさせる場合だけでなく、「表示しないこと」によって誤認させる場合もこれに該当するものとされています。
それでも単にこれだけの規定では誤った広告を防ぐことができないため、全国の不動産公正取引協議会による「不動産の表示に関する公正競争規約」で、一つひとつの細かな広告表示ルールが定められています。
広告の開始時期の制限
新築建売住宅や新築マンションなどで工事が完了する前の段階において、その工事に関する建築確認を受けた後でなければ広告をすることができません(宅地建物取引業法第33条)。完成前の物件広告に建築確認番号が記載されているのはこのためです。土地分譲で都市計画法による開発許可が必要となる工事などを伴う場合にも、同様にその許可を受けた後でなければ広告できないことになっています。
それ以外にも宅地の条件により許可や承認、処分などを受けることが要件とされる法律が30種以上あり、それぞれ該当する場合には同様に広告の開始時期が制限されます。
取引態様の明示義務
取引態様とは、広告をする宅地建物取引業者がその物件の売主なのか、売主の代理なのか、それとも媒介なのかということです。不動産広告ではその違いを明示しなければならないことになっていますが、インターネットにおける個別業者のwebサイトでは、この規定に違反している例も少なからずあるため、注意しなければなりません。
媒介の場合には原則として媒介手数料が必要であり、売主の場合には手数料が不要(その売主と直接、契約をする場合)です。売主代理の場合には手数料が不要となるケースが多いものの、必要なケースもあるので事前に確認するようにしましょう。
なお、媒介には「一般媒介、専任媒介、専属専任媒介」の3種類があるものの、広告ではその種別を記載する必要がなく、単に「媒介(仲介)」などと表示すればよいことになっています。
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